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結局元々の抜群のプロポーションと最高の愛嬌と才能を持っていたカレンちゃんは、すぐにモデル業界でもカリスマと呼ばれる存在までのし上がった。その後、名前を"カレン・エインズワース"として公表しても、誰にも家の力だとは考えさせないくらいに。
20歳で結婚し、イギリスの貴族から世界的な大富豪へと変わったカレンちゃん。それでも仕事の時に旧姓を名乗っているのは、TOKIWAの社長夫人としてではなく、自分自身の仕事として贔屓目無しの評価をされたいから。
俺はそんなカレンちゃんの仕事への姿勢を凄くかっこいいと思うし憧れている。だからこそ、モデルの仕事に憧れて、俺も自分の力で仕事を得られるようになりたい。
「顔出しする時が俺の本格的なモデルデビューになるから、それまでは俺は修行中なんだよ。だから、色んな写真に挑戦したいし、他のモデルじゃなくて俺を選んでくれたカメラマンには、本気で仕事したいって思ってるから」
俺だけの顔を写さないように写真を撮るというのは、ぶっちゃけ構図的にも難しい。それを不自然にならないように撮れというんだから大変だ。
「なぁ、その話ってちゃんと嵐太郎にしてるのか?」
俺の話を一通り聞いた後、のいちゃんがふと疑問のように聞いてきた。
え、した結果で今俺達喧嘩中なんだよね?
「いや、夏休みの撮影の事もあるし、俺は既にレイラはプロとして撮影の仕事をしていると思っていた。しかも小さい時から顔は出ていなくても有名ブランドのモデルとして仕事をしている」
「撮影はカレンちゃんの手伝い兼レッスンだよ?」
「お前の実力は既に手伝いって域を越えてるんだよ」
カメラマンの息子でもあるのいちゃんにそう言ってもらえるのは嬉しい。だけど、つまり何が言いたいのかがわからない。ハテナマークを飛ばす俺にのいちゃんが更に続ける。
「プロが自分がやる仕事を選ぶなんて事はざらにあるだろ?それが自分へのブランディングにもなる」
「でも俺はまだ仕事を選べる立場じゃ無い」
「そう。でも俺はレイラが今現在モデルを目指して修行中な事を、今知った」
ずっとプロとして、T.KRNの専属モデルだと思っていた。そう言うのいちゃんに、周りにいる騎麻以外のメンバーが頷く。
専属モデルどころか、むしろまだデビューすらしていない俺はT.KRN以外の撮影をカレンちゃんに禁止されている。俺自身が自分の見た目に負けない実力を身に付けるまで、俺はひたすら教えられる身なのだ。
確かに既に俺がプロとして撮影をしているなら、多少やる仕事を選んだりもするだろう。なんでもかんでもOKしていると、何でも屋のようになって、自分の目指す方向を失う事になる。
「つまり、嵐ちゃんも俺をプロのモデルだと思ってるから、仕事の内容は少しは選べよってこと?」
「まあ、嵐の場合は自分の気持ち的に仕事を選んでやって欲しいってのが強いだろうけど」
んー・・・、結局俺はどうすれば良かったんだろう。
考えれば考えただけ深みに嵌っていくようで正解が分からなくなってきた。
でも、
「嵐ちゃんに会いたい・・・」
「会えば良いだろう」
「!!」
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