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薔薇の花束を

「ね、ね、チョコどうするの?」 「チョコ~?」 相変わらず休み時間になると俺と要の席へと凌がやって来る。関係ない余談だけど、席替えが無いのは俺達の、1-Sだけらしい。理由は簡単、ハジメちゃんが新しい座席表を作るのが面倒だから。俺は教室の真ん中の列の最後尾で快適だし不満がないから良いけど、初めの頃はよく抗議の声が上がっていた。主に前列付近から。 「もうすぐバレンタインでしょ?レイラ君結城先輩にチョコあげないの?」 「あ~!バレンタインか!」 やばいやばい。クリスマスに続いてすっかり忘れていた。バレンタイン。日本では女の人が好きな人にチョコをあげるのが定番らしいけど、海外だと男の人が女の人に贈り物をする。 「嵐ちゃんにバラを贈るのもなんか違うよね、別に花に興味無さそうだし」 「チョコじゃなくてバラ?」 「海外だと赤いバラを贈るのが定番なんだよ」 バラの花言葉は"愛"。恋人や好きな人に贈るにはもってこいな花なわけだ。ということはやっぱりここは日本の定番のチョコをあげるべき? とりあえずポケットからiPhoneを取り出し「バレンタイン」と打ち込む。するとその後ろに出てきたワードが・・・ 「"手作り"・・・?」 え、チョコって手作りであげるの?俺料理したことないのに?・・・あ、別に買ったやつでも良いのか。でも手作りの方が想いが伝わる?愛情がこもってる?いやいや、初心者の手作りよりプロの方が安心じゃないかな。 「俺、多分チョコ溶かして固め直すくらいしか出来ない・・・」 「え、レイラ君手作りするの?だったら俺と一緒にやろうよ!」 「!!」 凌が一緒に作ってくれるならなんだか出来そうな気がする!夏の別荘でも文化祭でも凌の料理は美味しかった。 でも、 「凌誰にあげるの?」 「えっ!み、みんなにだよ!?」 え、怪しすぎる。 凌の反応はちょっとおかしかったけど、初めてのお菓子作りをすることになった。勿論そういったことに興味の無い要はパスらしく、むしろバレンタインにも関心が無さそう。 あ、そういえば安ちゃんはやっぱりこのくんにチョコをあげるんだろうか?安ちゃんも料理が上手だから、きっとあげるなら手作りな気がする。折角なら一緒に作ろうと誘おうかと思い、連絡先を開いた所で手が止まった。 あれ?安ちゃんとこのくんの事ってみんなには秘密にしてるんだっけ? 「ま、いっか」 「?どうしたの?」 「で、やっぱり安ちゃんはこのくんに手作りチョコあげるの~?」 「れ、レイくん声が大きいよ!?」 昼休みに廊下でたまたま見かけた安ちゃんに近付き声をかけた。ちゃんと周りに人が居ないとこに移動して話してるから大丈夫なのに、キョロキョロを周りを確認する安ちゃんが面白い。 「もうみんなに言っちゃえばいいのに」 「いや、だからほら、今更過ぎて恥ずかしいというか・・・」 別に気にするようなことじゃないのに。まあ安ちゃんには安ちゃんの考えがあるんだろうな。 でも、 「ごめん安ちゃん、さっき凌にぺろっと言っちゃった」 「ぇ・・・ぇええぇえ!?」 そう、言っちゃった。すごい興奮してた。そりゃもう鼻血を出す勢いで。というかちょっと出てたけどね、鼻血。 俺の言葉を聞いて真っ赤な顔で固まってしまった安ちゃん。そして固まっていたかと思うと頭を抱えて何かを考え始めた。 「いや、いつかはみんなにも言わなきゃとは思ってたし?ちょっとタイミングは違うけど、これはこれで・・・でもやっぱまだ心の準備がっ」 「安ちゃーん?」

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