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初めてのお菓子つくり
「はいっ、では今日はガトーショコラを作りたいと思います!」
今日のために調理室を借りておいた。バレンタイン前日の今日は日曜日。凌と安ちゃんと時間を合わせての、今からチョコ作りを開始する。
先週までは凌に知られた事でドギマギしていた安ちゃんも、流石に落ち着いたみたい。それは凌も同じで、もう鼻血を噴き出すことなく影で見守ることに徹するらしい。
「レイくん包丁使ったことある?」
「ん~ステーキ食べる時にナイフは使うけど」
「・・・そっか」
いやだって俺、キッチン立ち入り禁止だったし。小さい時に揚げ物をしていた十六弥くんに飛びかかって以来、未だに使用中のキッチンに入る事を禁止されている。・・・流石にもう飛びかかったりとかしないのに。ちなみに十六弥くん達は元々料理が趣味だから、よく時間があればご飯を作ってくれる。カレンちゃんも器用で料理も得意。
「まあレイラ君器用だから大丈夫だと思うけど、包丁と火には気をつけてね」
「はいは~い!」
まずはチョコレートの塊を溶かしやすいように細かく刻む。包丁、初めて使った。
ザク、ザク・・・
「あ、レイラ君いい感じだね!それ刻めたら次にこのお湯に器ごと入れて溶かしてね!」
お湯でどんどん溶けていくチョコから更に甘い香りが広がる。その間にテキパキと凌と安ちゃんが他の材料を混ぜたり、オーブンの用意をしていく。
メレンゲを作り、溶かしたバターと卵黄を合わせ、さっくりと小麦粉とメレンゲを混ぜ合わせていく。それを型に流して余熱してあったオーブンへと入れる。
「あとは、25分待てば完成だよ」
安ちゃんがスタートボタンを押し、あとは待つだけ。・・・え、
「もう終わり?もう出来ちゃうの?」
まだ一時間も経ってないよね?これであとはもう待つだけなの?
「そうだよ~」
「ガトーショコラって基本的には溶かして混ぜて焼くだけだからね」
「うっそ!簡単!!」
お菓子作りがこんなに簡単だとは知らなかった。むしろこんなに簡単なら俺って料理も出来ちゃう感じ?才能発揮しちゃう?だって十六弥くんの息子だし?十六弥くんプロ級だし?
「見て見て~こんなのも作ってみたよ!」
お菓子作りの才能を発揮させようと考えていると、凌が冷蔵庫から何かを取り出した。それは透明のカップに入っていてパッと見はプリンみたい。
「チョコレートムースだよ」
「へぇ~美味しそうだね」
「良かったらおやつに食べてください!!」
いつの間にかそんなものを作っていたなんて。有り難く安ちゃんと一つずつ貰いスプーンで掬って食べる。うま。
「安ちゃんとこのくんってどっちから告白したの?」
「あ!俺も聞きたいです!!是非!!!」
「え~・・・」
俺が話を振ると安ちゃんがもじもじとし出す。あれだよね、安ちゃんのこういう反応可愛い。なんと言うか、男心をくすぐる感じ。きっとこのくんもこういう姿にキュンキュンしちゃう感じなんだろうな~。
「・・・れ」
「ん?」
「俺が言ったの!」
へぇ~安ちゃんからだったんだ。なんだかちょっと意外?こんなに恥ずかしがってるくらいだから、このくんに押された系かと思った。
顔を真っ赤にして机に顔を押し付ける安ちゃんがボソリボソリと話し始めた。
「あいつ鈍感だし奥手でタチ悪いんだよ・・・。そのくせ、俺が落ち込んでたりしたらすぐに気付くし、優しいし、つかイケメンだし?そりゃ惚れるでしょ!ねぇ!?」
「ぅ、うん、そうだね」
「わかります!!そりゃもう惚れるなって方が無理な話ですよね!!」
何かが爆発したように勢いよく話し始めた安ちゃんとそれに興奮気味に食いつく凌の異様な光景。俺はもう聞き役に徹しよう。そうしよう。
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