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誰か嘘だと言って!
「今日は二人共付き合ってくれてありがとう」
安ちゃんと凌を見守っていたらあっという間にガトーショコラが焼けた。問題なく上手に出来たそれを粗熱を取った状態で持ち帰る。あとは食べる前に粉砂糖か生クリームをのせればOKなんだって。うんうん、これなら嵐ちゃんも喜んでくれそう。
「ただいま~」
「おかえり」
「あ、嵐ちゃん帰ってたんだね!」
今日は晃太くん達漢気軍団(笑)とトレーニングルームに行っていた嵐ちゃん。すでにお風呂に入ってさっぱりした後みたいで部屋着のスウェット姿だ。
とりあえず出来たてのガトーショコラは箱に入れたまま冷蔵庫に入れる。バレンタインの本番は明日だからね。一晩冷蔵庫で寝ててもらいましょう。
「上手く出来たか?」
「俺料理の才能発揮しちゃったかも」
「そりゃ明日が楽しみだな」
口角をにやりと上げて笑う姿はかっこいい。なんだかここ最近で更に大人っぽさが増して来た気がする。これ以上色気を振り撒いてどうする気だろう。
とりあえずいつも通り部屋での定位置であるソファに転がっている嵐ちゃんの上に重なる様に寝転ぶ。別に重くは無いはず。俺軽いし。
「そういや、明日知らない奴からの手作りチョコは食うなよ」
「なんで?」
「なに入ってるかわかんねぇから」
え、むしろ何入れるの。ちょっと気になる。
でもそんなことより実は今すごく気になることがある。昼間に安ちゃんから聞いた話なんだけど・・・
「ねぇ嵐ちゃん、俺今日安ちゃんから怖い話聞いたんだけど」
「どうした?」
これが本当だったら本当に怖い。というか無理。
「来月、マラソン大会があるって本当?」
「あぁ、そういやもうそんな時期か」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぢか。
やっぱりあるのかマラソン大会!!まぢでやるのかマラソンを!!いや、でも流石に42.195kmは走らないよね?走らないよね!?!?え、だってそんなに走れないよ?体力ないもん。というか、どこを走るの?この学園があるの山の中だよ?山中マラソン?更に無理なんだけど。
「マラソンとか俺確実に死ぬよ!?」
「死なねぇよ」
いやまぢで嵐ちゃん俺の体力知ってるじゃん。死ぬでしょ。やぁ~だぁ~~~・・・
「ちなみに、何km走る?あ、何m?」
「アホか。確か・・・10kmだったか?」
「むぅ~~りぃ~~~っ!!!」
マラソン大会の話なんて騎麻も真斗も一度もしていなかった。でも嵐ちゃんが言うには受験のある高三以外は中等部から毎年の恒例行事らしい。そんなの聞いてない。絶対わざと内緒にしてたんだ。聞いたら俺が嫌がるから。
どうやったらマラソン大会に出なくて済むだろうか。だって普通に考えて俺体力ないし。10kmとか走れないし。・・・あ、走れない状況を作ればいいか。
「・・・入院しようかな」
「おいこら」
アホな事言ってんなと頭を小突かれる。失礼な。俺は本気なのに。あ~・・・天羽学園に通い始めて初めて学校に行きたくないと思ってしまった。
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