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甘い贈り物
「でも何か凌にしたわけ?あんな急に要のこと意識しまくってる感じになるっておかしいよね」
要が凌を狙ってたことはとりあえずわかった。でも今まで凌は要に対して完全に友達としての好きって感じだったはず。でもここ最近、特に今日の凌の反応は、確実に要をそういう対象として意識している。
「冬休み明けに軽く襲った」
「え"!?」
あ、やばいやばい。つい大きな声が出てしまい慌てて口を押さえる。教卓から教師がこちらを視線を向けてきたのを笑顔で誤魔化す。
よくよく話を聞いてみると、襲ったと言っても軽く押し倒して、ちょっと軽く口説いただけらしい。
・・・軽くってなんだろう。
でもそれが上手く効いて、凌は要のことを意識し始めたみたい。というか、今思うと元々凌は要の事を特別視していたと思う。だってあんなに俺や周りの人で散々妄想するくせに、要をターゲットにした妄想は聞いたことがない。それって要が誰かと引っ付くのが無意識の中で嫌ってことじゃないかな。あくまで今回の事を知ってからの想像だけど。
「え、どうしよう。なんかわくわくしてきた!」
「そのテンションのままマラソン大会も乗り切れ」
「それは違うよね」
今後の展開を見守らなきゃ!
「それにしても中一からなのによく今まで襲わなかったね」
「すげぇだろ」
うん、嵐ちゃんとは大違いの奥手具合だね。
「レイラ君!受け取ってください!!」
「ありがとう~」
休み時間の度に増えていくチョコの山。今ので何個目なのかもうわからない。一応嵐ちゃんからの忠告に従って手作りのチョコは分かるように分けてある。・・・疑う訳じゃないけど、本当に何か入れられてたら嫌だし。
「モテる奴は大変だな」
「・・・俺実はそこまで甘いの好きじゃないんだけど」
「見た目は主食が綿菓子って感じなのにな」
なんだそれ。別に嫌いでは無いけどちょっとでいい。カエラは究極の甘党だからいくらでも甘いものを食べ続けるけど、俺とサハラはそこまでじゃない。
今までのバレンタインは貰うよりあげる側だったから、この大量のチョコの行方はどうしたものか。きっと毎年これを体験してるだろう嵐ちゃんや騎麻達に相談するか。
それに帰ったら俺も嵐ちゃんにガトーショコラをあげなくちゃ。・・・こんなにチョコを貰うならしょっぱい食べ物の方が良かったかな。
結局放課後になる頃には大きな紙袋四袋分にもなったチョコの数。紙袋はこうなる事を予想していたらしい凌がくれた。食べてないのにすでに胸焼けがする。晩御飯は肉にしよう。がっつりした肉に。出来るだけスパイシーな味付けのやつ。
「ただいま~」
「おかえり」
寮の自室に帰ると先に帰っていた嵐ちゃんに迎えられる。二年生の教室は一年生より寮に近いから、大体いつも俺より帰宅が早い。
「大量だな」
「甘い匂いで胸焼け~」
両手に抱えた袋を見た嵐ちゃんが苦笑いする。でも俺は気づいてるんだからね。ソファーの横に俺が持ってるのと同じくチョコに溢れた紙袋が転がってることに。
「チョコって腐る?」
「既製品ならそんなすぐには駄目にならないだろ」
折角俺のために用意してくれたものだと思うと出来る限りちゃんと自分で食べ切りたいと思う。思うんだけど、誰かチョコに紛れてポテチとか入れてくれてないかな。甘いのばっかりはキツい。
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