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それは甘い誘惑?
とりあえず一日三個をノルマにしようと思う。無理はしない。折角食べるなら俺の舌が美味しいと認識する範囲にしておかないと。
「嵐ちゃんはガトーショコラ食べてね!」
冷蔵庫に寝かしておいたガトーショコラを皿に移し、嵐ちゃんへと渡す。うんうん、美味しそう。ビターチョコで甘さ控えめをチョイスした俺、グッジョブ。
フォークで大きめの一口に切り分けたガトーショコラを嵐ちゃんが口へと放り込む。上品だけど、大きく口を開けて食べる姿は男らしい。
「・・・どう?」
昨日自分でも味見をしているから美味しくないことは無いと思う。それでも何だか嵐ちゃんの反応が気になってそわそわしてしまう。
「ん、美味い」
「よかった!!」
その一言を聞いただけでテンションが跳ね上がる。自分で作ったものを美味しいと言って貰えるのは嬉しい。なんだか今朝の凌の気持ちが凄く分かった。
ルンルンの気分のまま紙袋から取り出した包みを開けて、本日のノルマの一つ目に手を出す。しかも取り出したそれには、貰った時には気付かなかったが、メモが一枚付いていた。
" 嵐太郎君と一緒にどうぞ "
「これ、嵐ちゃんも一緒にどうぞって」
中は美味しそうな生チョコが四つ並んでいる。その中の一つをつまみ上げ口の中に放り込むと、程よい甘さが広がった。あ、これアタリだ。美味しい。
嵐ちゃんの分を残して残りはあっという間に俺の腹の中へと消えた。膨大な量に嫌気がしていたけど、一つ一つがこのくらいの量ならどうにかなるかもしれない。
その後は日課のまったりタイム。俺も嵐ちゃんも基本的にスポーツや体を動かす事は好きだけど、ソファーにダラっと転がってテレビを観たり雑誌を読んだりのこの時間も大好き。
いつも通り嵐ちゃんの太ももを枕にリラックス。
・・・・・・リラックスしていたはずなんだけど。
「暑い・・・」
「?珍しいな」
おかしい。寒がりの俺に合わせて少しだけ高めに設定してある室温はいつも通りだし、別に普段より厚着をしていることもない。体調も悪くないのに、何故か身体が熱く火照っている。
「熱はないな、」
「ぁっ」
・・・・・・・・・え。
体温を確認するために嵐ちゃんの手が首筋に触れた瞬間に、自分の口から漏れた声に驚いた。元から弱い脇腹は触られると声が出る時もあるが、首筋は別に触られても平気だったはず。なのにちょっと手が触れただけで感じたのは、確実に甘い痺れだった。
「お前、まさか・・・」
何かを感じ取ったのか動こうとした俺の身体を嵐ちゃんが抱き上げた。するとーー、
「っ、はぁ」
「・・・まぢかよ」
俺の反応に頭を抱えた様子の嵐ちゃん。ああ、俺にも分かった。この自分の意志とは別に身体が熱くなっていく感じ。俺は前にもこれとよく似た状態を体験した事がある。
うわー・・・、これってやっぱさっき食べたチョコ?だって寮に帰ってからまだあの生チョコしか食べてない。
「嵐ちゃん・・・」
「来い」
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