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保健室に住みたい
あぁ、今日はいい天気だなぁ。こんな日はティノと公園でボール遊びとかしたいよね。そんで疲れたら家に帰って嵐ちゃんと昼寝して、お腹が空いたら十六弥くんの手料理食べてー・・・
「・・・レイラ、諦めろよ」
「現実逃避しても後で先生に怒られるだけだから」
「・・・・・・だよね」
一生懸命のんびりした日常を想像しても、現実では体育の授業の真っ最中。しかも先週までは楽しくサッカーをしていたはずなのに、今日からの授業は"マラソン"という、何に楽しさを見い出せばいいのかわからない種目。
つか、こんな寒い中10kmも走るのなんか一度でも辛いのに、授業でも走らされるとか聞いてない。え、ほんと練習とかいらないから。俺死ぬよ?リアルな感じで行くと保健室の住人になるのは必須でしょ。
「うわ、無理、想像しただけでもう倒れそう。保健室で寝てきていい?」
「レイラ君授業でそんなこと言ってたら本番はもっと大変だよ~?」
「本番は山中マラソンだからな」
・・・・・・・・・・・・は?
「俺ちょっと今から理事長室行って和臣おじさんに抗議してくるわ」
「やめとけって」
結局その後すぐに来た先生に理事長室に行くことは阻止された。ほんと、山の中を走るとか聞いてない。ここって金持ちの集まるお坊ちゃん学校じゃなかったっけ?お坊ちゃん山の中走らなくない?
そんな事を考えているうちにも授業は進んでいくので、スタートの合図と共に一斉に走り出す。
短距離ならクラス内でも、なんなら学園内でもトップの速さの自信はあるけど、今回は長距離。ペース配分を間違えるわけにはいかない。
サッカー部の凌やバスケ部のみっちゃんゆっきー、他の運動部のみんなが当たり前の様に先頭集団としてトラックを駆け抜けていく。よく見れば要も先頭集団の少し後ろの位置にいて、真ん中よりやや後ろに位置する俺との距離は少しづつ開いていくのがわかる。
結果からいくと、5kmまでは頑張れた。5kmを過ぎた頃から徐々に頭がフラフラし始め、スピードもどんどん落ちていく。そして走るのを諦めて歩き始めた時には脳に酸素が上手く回っていなかったと思う。
「・・・で、気付いたら保健室で寝てましたとさ」
何度もお世話になって見慣れた保健室の天井に向かって呟く。ぶっちゃけ最後の方は意識が朦朧としていて覚えていないけど、走っている最中に倒れて運ばれたのは間違い無さそうだ。まあ、予想通りの結果だからね。
「あ、目が覚めたみたいだね」
さっきの俺の呟きが聞こえたのか保健医である埜下天音先生の登場。
「天音ちゃ~んすっげぇ頭痛いんだけど~」
「無理のし過ぎはダメだよ。ただでさえ体力の無いもやしっ子なんだから」
「うわ、悪口」
ひどい。確かに体力は無いけど身体は細マッチョだもん。もやしではないもん。・・・多分。
割りと普段から保健室のお世話になることが多いせいで、自然と天音ちゃんとは仲良くなった。ちなみに天音ちゃんは裏門の守衛の優希くんと同級生で、二人は1-Sの担任のハジメちゃんの後輩なんだって。世間は狭いね、うんうん。
「ほら、もう少し休んで元気出たら次の授業から出席しなさいね」
「はーい、マラソン大会当日もきっと来るね~」
「こらこら」
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