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ごめんなさい

「なんだレイラ君と結城先輩にダブル告白した勇者ってよっしーのことか!」 「やあやあ凌ちん朝練ぶりー」 気安い感じで挨拶を交わす二人。もしかしなくても知り合い同士のようだ。 「あ、さっき緊張で名乗るの忘れちゃったんだけど、俺1-Cの桑名嘉乃って言います。凌ちんと同じサッカー部に入ってます!」 こちらにグッと親指を立てて遅すぎる自己紹介。普通は告白の前にするんじゃないかな?そんで最初の印象とキャラ違う。なんかこう、もっと儚げな感じだった気がする。・・・気のせいだったのかな。 いや、まあさっきの告白の内容的に儚げとかほんと気のせいだ、うん。むしろ凌と同じテンションで会話してる姿が目の前にあるんだから、初めの印象はもう幻でしかないな。 「あ、わかったくわにゃ・・・よしの腐男子?」 「いやいや俺は腐ってないよ〜凌ちんの話で知識は豊富だけど」 「あ、違うんだ」 もしかしてと思ったけど違った。いや腐った人間がそんなそこら中にいるとは思ってないけど。 「え、今の“くわにゃ”はスルー?めっちゃ可愛く噛んでたけどスルー!?」 「あ、凌うるさい。大人しく誤魔化されろよ」 「誤魔化せてねぇよ」 要もうるさい。一旦スルーしたんだったら最後まで聞き流しとけよ。恥ずかしい。 「そうだよ凌ちん!さっきの最高に可愛かったよ!!でもつっこんだりしたらレイラ君が意地になってもう言ってくれないかもしれないじゃん!!」 「そうだね、もう言わないよ」 みんな一回のミスに厳しい。 続々と後発の二年生もゴールしてマラソン大会も終わりが近づく。この後にある表彰式を終えれば俺の辛くて長かった二週間が終わる。体力温存のための早寝も終了だ。明日は休みだし、夜更かししてやる。 あぁでもその前にやる事が一つ残っている。 表彰式の直前まで一緒にいたよしのとは一旦クラス別に集まるために分かれ、終わった後にまた会う約束をしている。勿論それは、さっきの告白の返事をするためで、落ち着かない。 だって凌の友達って分かったら何だか一気に親近感が湧いて、表彰式の直前まで仲良く盛り上がってしまった。そんな相手をこの後フる訳で。ぶっちゃけめっちゃ気まずいよね!! 『これで表彰式を終わります』 終わった・・・。終わってしまった!!!何度経験しても告白の返事をする時は緊張する。OKならまだしも、NOを伝えるのはどんな相手でもやっぱり気まずいし、気が重い。 「あ、レイラ君お疲れさま〜・・・ってめっちゃ顔暗いよ!?」 「今からよしのをフると思うと気が重い・・・」 「ええー・・・それ本人に言う?」 なんならOKしてくれてもいいよと笑いかけてくるよしの。このユルい雰囲気がなんとも言えない空気感で、ぶっちゃけ割りと好きなんだよな〜。だからと言ってOKはしないし好きのジャンルが違うんだけど。 「ごめんなさい」 「うん。まあ初めから分かってた事だからね」 レイラ君は気にしないで。そう言うよしのに頭を撫でられる。あぁ、こういうとこが俺のダメなとこだなぁ。答えが分かってたとしても落ち込むのは俺じゃなくて相手のはずなのに。よしのが俺を気にして慰めてくれている。俺が落ち込むのはおかしいのに。 「ほんと初めからOKして貰えるとは思ってなかったから。ただ、仲良くなれて気がむいた時にレイラ君と結城先輩のいちゃいちゃの間に混ざりたいなって思ってはいるけど」 「ええー・・・それはどうだろ」 返事をする前と全然雰囲気の変わらないよしのの様子にちょっとホッとした。 「あ、でもフられた勢いで本心を言うなら、二人のエッチに混ざって3Pしたい」 「はぁ!?ちょ、ぇえっ!?」 待って待って待って。今すごいこと言ったよね?今そんなこと暴露するタイミングだった?? 「あ、安心してね。俺無理にレイラ君襲おうとか思ってないから」 「いや、別にそんな心配はしてないけど・・・」 「俺レイラ君には挿れられたいし」 「!!!」 そっちか〜〜〜・・・。いや、それでも全く安心には繋がらないんだけど。

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