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新たな旅立ち

「今思い出すとずっと思ってはいたけど、実際に言葉として“学校に通ってみたい”って言ったの、一年前が初めてだったのかも」 改めて考えるとそうかもしれない。思ってはいても言葉に出したことの無かったそれは、言うなら“志望”ではなく“夢”だった。絶対にこうしてやるという思いより、いつかこうなれたらいいなぁ、というふんわりしたものだったのだ。 「そうなの?」 「通信で大学出てるしモデルも手伝ってたし、何よりずっと大人に囲まれて生活してたから」 学校で習う勉強は家でも出来たし、身につける集団行動や常識も、多くの人に囲まれて生活していたから身にはついた。周りにいるのは既に社会に出て働いている大人ばかり。何なら普通の人よりも広い世界を見せて貰っていると思う。 それでも俺達の世界はまだまだ狭い。知らない世界の方が何倍も多くて、聞くだけじゃわからない知識だってたくさんある。学校というものもその一つで、騎麻達から聞くだけじゃ知れなかったことが山ほどあった。 元々俺達のやりたいことにNOと言わない十六弥くんとカレンちゃんだ、言葉に出したらあっという間に事は進んだ。むしろ俺達の口から言うのを待っていたのかもしれない。 「もっと早く言えばもっと早くみんなと出会えたのかなって思うと、ちょっと勿体ないな」 こんなに学校が楽しい所だと知っていたなら、もっと早くから通うべきだった。まあ、そんなたられば話はしても仕方ないんだけど。それに去年までの生活も出会いも全部俺には必要な経験だったから。 「その分これから長い付き合いになるんだからいいけどね!」 「決定事項なんだな」 「え〜俺もそのつもりだよ要!」 「ま、俺もそのつもりだけどな」 わ!珍しく要がデレた!! でもそう言ってくれるのが嬉しい。俺は今まで出会った人もこれから出会う人も、みんな大切にしたいと思っている。 俺のこれからの人生の中では、きっとまだまだ知らない出会いが数えきれないくらいある。その出会いを良い物に出来るかは自分次第かもしれない。だったら俺は、その出会いを俺にとっても相手にとっても良い物にしたい。 その対象には勿論既に出会っている要や凌も、学園のみんなも入っている。俺は欲張りなので、俺自身は勿論、俺に関わる全ての人が幸せになって欲しいと思ってしまう。 それが実現出来るだけの力を身につけよう。まずは身近な人から、手の届く距離にいる人から、一緒に幸せになってもらおう。 「そろそろ教室戻るか」 要に促されて教室へと戻ることにした。まだ別れを惜しんでいる姿もちらほらとあるけど、大分人数は減ってきている。今日は悲しい別れの日ではない。これからみんなが新しく出会う世界が、辺りに咲き誇る桜のように色鮮やかであればいい。そう思った。

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