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聞いてないよ
俺が二年生になるということは一つ上の嵐ちゃんや騎麻達は三年生。追い付くことがないそれがなんだか不思議な感覚だ。モデルの仕事の時は、勿論初めはみんな新人だし先輩後輩ってのはあるけど、最終的には実力主義。TOKIWAグループも入社年数に関係なく、みんなの能力にあった仕事をしているから、上下関係というものが少ない。
だからこの年齢ごとに分けられていて、それが入れ替わることも混ざり合うこともないというのが、ちょっとだけ不思議。だって大学に行くと色んな年齢の人が混ざって授業してるもんね?ま、これは俺が今まで学校に通っていなかったから思うことなんだろうな。
「三人ともお疲れー」
後片付けをし終えた頃、調度別の作業をしていた騎麻達残りの生徒会と合流した。みんな休みの日まで働いて本当にえらいよね。
生徒会といえば、俺は一つ気になっていた事がある。
「ねぇ、去年俺が学園に来た時から生徒会って三年生いなかったよね?」
「まあ正確にはいたけど早々と引き継ぎして後方支援に回ってたんだけどね」
あ、いたんだ。騎麻や響ちゃん達が言うには、一つ上の先輩達は仕事は出来る人達だったけど、あまりトップに立って人を纏めるというのが得意では無かったらしい。どちらかというと、サポート役をさせると最強な人だったとか。
なので、トップに立つのに最適なカリスマ性を持ち合わせた騎麻が、高等部に入学した途端に生徒会長に騎麻を指名したらしい。天羽学園の生徒会は歴代の役員からの指名で決まるんだって。
「それがどうかしたか?」
「んーん、もし三年になって騎麻達が生徒会から居なくなるってなったらケイが一人になっちゃうなって思って」
だって今の生徒会はケイ以外は三年生だ。みんなが一気に居なくなったら、こうやって休みの日まで仕事をしているのに仲間が居なくなってしまう。あ、それかケイみたいに指名されて明日入学する一年生が生徒会に入るのか。
「俺達は通常通り秋までは生徒会にいるよ。それまでに新しい生徒会メンバーを育てないと行けないからね」
「そうだよね。ま、大変だったら今日みたいに俺も手伝うし」
ケイは優秀だけど流石に一人の力には限界があるもんね。レイラくんがいつでも助っ人マンになってあげるよ。明日発表されるけどSクラスは多分というか、100%クラス替えがないらしいから、俺達は今年も同じクラスのはずだし。
「レイラ、お前は手伝う所か即戦力だぞ?」
「ん?」
「明後日の始業式で発表するから」
「ん??」
「あれ、言ってなかったっけ?レイラは次の生徒会長やってもらうって」
「!!!!!」
き い て な い !!!!
え、なにおかしいなーみたいな顔してるの?しかも騎麻以外のみんなもうんうん頷いちゃって、みんな知ってて俺だけ知らないの?俺の事なのに??
「もしかして、レイラ君に言ってなかったのか?」
「え、そうなの騎麻」
「それはどうかと思うぞ」
「騎麻先輩・・・」
俺の反応に状況を察したらしい生徒会のみんなに責められる騎麻。なんで普段はしっかりしてるのに急にうっかりをやらかすの。
「ごめんごめん、つい言ったつもりになってた。まあでもレイラなら大丈夫でしょ?」
「まあいいけど」
「「「「え」」」」
え?
俺の返事にぽかんとするみんな。別に生徒会長になるのはいいよ?まあ、やった事ないからわかんない事多いと思うけど。それは騎麻達がフォローしてくれるんでしょ?
「騎麻が俺を選ぶなら俺は何も問題ないよ?」
「レイラならそう言うと思ったよ!」
だって俺なら出来ると思ってくれてるから騎麻は選んだはず。だったら俺はその騎麻の選択を信じてやってみようと思う。
まあ慣れない事が大変なのは当たり前な事だし、それに大変なだけの仕事なら騎麻達が毎日楽しそうにしてるわけが無い。今までにも仕事を手伝ったりして、その楽しさややり甲斐を俺は既にちょっとだけ知っている。
「流石レイラ君、頼もしいね」
「レイラ君、一緒に頑張ろうね!」
なんだか今年は去年より更に面白くなりそうだ。
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