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天羽学園高等部にようこそ

「ーー以上をもって天羽学園高等部の入学式を終了します」 拍手と共に新入生が体育館を去っていく。みんな胸元に赤い花を飾り、まだ着慣れていない高等部の制服にそわそわした様子が見て取れる。 「みんな可愛いなー」 「俺らからしたら見慣れた顔ばっかだけどな」 「まあまあそう言わず」 今日も隣にいるのはいつも通り要と凌。予想通りSクラスは全く変わらない顔ぶれで今年も仲良しクラス続行中です。ちなみに担任も去年に引き続きハジメちゃんだった。入学式の今日も相変わらずのだるだるスタイル。 でも、そっか。ずっと学園にいる要達にしたら新入生といっても見知った人達なのか。サッカー部の後輩を見つけた凌が退場していく新入生に手を小さく手を振っている。 「お前にも熱心に手を振ってる奴がいるぞ」 「本当にねー、もう少し控え目に振ってくれたら振り返そうと思ったんだけどねー」 少し離れた位置から全力でこちらに手を振っている、周りよりも頭一つ飛び抜けた姿に俺の方が恥ずかしくなる。 「相変わらずだなぁ鷹」 隣にいる真斗が全力で知らない人のふりをしている。あんなに性格が違う二人なのに仲がいいのが面白いなぁ。でも俺も今は真斗を見習って全力で知らない人のふりを決め込もう。うん、それがいい。 その後なかなか退場しない鷹を見兼ねた真斗が一発殴って強制退場させ、無事入学式は終了した。 今日はこの後授業もない。けど、俺にはこの後行くところがある。 「いつの間にか生徒会に選ばれてるとはな」 「でも納得だけどね!」 生徒会に選ばれたことは今朝二人に伝えていた。 「じゃあ俺もう行くから。また明日ー」 この後は生徒会の新メンバーの顔合わせ兼明日の打ち合わせがある。今年も同じクラスのケイと共に生徒会室へと向かう。 「ケイは副会長になるんだね」 「うん!響也先輩が後任に指名してくれたからね。僕はあまり前に出て色々するよりサポートの方が得意だから、レイラ君と違って副会長って言われた時は凄く緊張したなぁ・・・」 でも、折角のチャンスだから頑張ってみようと思う。そう言うケイが凄く頼もしい。それにケイは普段から年上だらけの生徒会の中でも、みんなに負けないくらいテキパキとしているし、自分の意見もしっかり伝えることが出来る。サポートは勿論上手いけど、十分上に立てるタイプの人間だと思う。 「お、レイラとケイも揃ったな」 「あらら、遅くなってごめんー」 「遅くなりました!」 生徒会室から一番教室が離れていた俺達がどうやら集合が一番遅かったようで、室内にはすでにみんな集まっていた。 「レイラ君!!会いたかったー!!!」 俺よりも大きな体が勢いよく抱き着いてくるのをどうにか踏ん張って受け止める。先程知らない人のふりを決め込んだばかりの鷹だ。次は物理的に接触を試みたようだ。 「痛い!重い!!」 「もぉー!なんでさっき無視したんですか!?俺悲しかったんすよ!!」 ぎゅうぎゅうと抱き締めてくる力が強くて痛いしでかくて重い。しかもどさくさに紛れて尻を揉むな匂いを嗅ぐな!! ドカッ ガッ 「落ち着け馬鹿」 「恥を晒すな馬鹿」 鈍い音と共に俺にかかっていて重みが消え去る。 「ナイス真斗ーのいちゃーん」 見下すような顔で鷹に拳骨を飛ばした真斗と、呆れた顔で蹴り飛ばしたのいちゃん。綺麗に鷹が吹き飛ばされていった。お見事。 「鴇君も真斗も、今本気でやったよね!?しかも馬鹿馬鹿って・・・俺は“バカ”じゃなくて“タカ”だからね!?!?」 一瞬で復活した鷹が二人に向かって叫ぶけど二人は気にした様子もない。慣れてるんだなー。慣れたくないけどな。 それにしても確かに二人共手加減はゼロで振りかぶっていた。多分、てか絶対物凄く痛かったと思う。 「ほらほら戯れるのはそんくらいにして話進めるぞ馬鹿」 「騎麻君まで!!!」 騎麻に促されてそれぞれ椅子に座る。今日集まっているのは騎麻達現生徒会五人と、新たに生徒会に入る俺、真斗、鷹と、そして初めて見る小柄な子が一人。ネクタイの色からしても間違いなく一年生だ。

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