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俺に言うことはない?
「意外と真面目なこと言えるんだな」
始業式を終えてクラスに戻ると開口一番に要に言われたそれ。
「・・・それどういうこと」
「いっつもふらふら色んな所に行ってお茶しておやつ貰って日向ぼっこしてって、猫みたいな生活してるだけかと思ってた」
・・・なんか一昨日のいちゃんにも似たようなこと言われたような?
実際に間違ってはいないけど。俺は普段から色々なクラス、色々な学年に遊びに行く。体育祭を通して仲良くなった人の所や、普通に声をかけられて話したり。それは生徒間だけではなく、食堂の料理人達や管理人の玄さんや優希くんの所や、勿論和臣おじさんのところにも。
俺は学園について、学校というものについて知らない事が多い。だから少しでも沢山の人と交流を持って沢山のことを知りたかった。
別に生徒会の為なんて事は全く関係無かったけど、結果としてこの一年で知ったことが今後のためにはなりそうだと思う。
「これから要達もしっかり協力してね」
「面倒くさそうだけど、面白くなりそうだな」
勿論。面白くする気しかないよ。
それよりも、俺は昨日から気になって仕方なかったことがある。そろそろ突っ込んでもいいだろうか。割りと我慢したんだ。昨日はあまり教室でゆっくり出来なかったからね。
「要、凌、おめでとう?」
「!!!!!」
あ、凌がめちゃくちゃ赤くなった。この反応は間違いないな。
「やっぱ気付いてたか」
「そりゃ気付くよ・・・首にキスマーク付いてるし」
「え!?!?」
慌てて首筋をおさえる凌。どこ!?と言いつつ制服を引っ張って首を覆っている。でも、凄く必死で隠してるけど、残念なお知らせです。
「要の首に」
「そっち!?!?」
突っ込みと同時に要の首を手で隠す凌。慌てすぎてて面白い。しかもキスマークを付けた本人だろうに気付いてなかったのか。
「で?いつから?」
「一昨日」
ということは本当に最近じゃないか。バレンタインは様子がおかしかった凌も、意外とすぐに普段通りに戻っていた。要は恋バナとかをするタイプではないし、元々誰にも言わずに三年も片想いをしてたくらいだから、俺からは何も聞いていない。めちゃめちゃ気にはなっていたけどね。
「だって中等部で同じクラスになってから三年も、俺、俺の事、好きだったとか信じれる!?要だよ!?そりゃ普段はクールで、たまにちょっと意地悪な時もあるけど、基本は優しいし、なんなら仲良くなった人にはちょっと甘いとこあるし?例えるならほら!一匹狼が実は子猫に優しい的な!?」
「確かに要は優しいよね」
「別に一匹狼になったことねぇよ」
んー、その例えはわかるようで全然分からない。要は確かにクールなとこあるけど全然みんなと仲良くしてるし、子猫以外にも優しいし?
「バレンタインの少し前くらいから、ちょっと距離近いな?とかちょっと雰囲気が甘いな?とか思ってたけど・・・。でも俺の好きなのは女の子だったし?BLは好きだけど?勝手な自意識過剰だったら恥ずかしいし?でも春休みの前日に要に告白されて、嫌じゃなかったことに驚いて、そのまま春休み中迷いに迷った末に俺もこちらの世界にやってきたということです!!!以上っ!!!!」
つまり、要のことは何となく意識していたけど勘違いだと思っていた。でも、いざ告白されてみるとノーマルだと思っていたのに嫌ではなく、むしろ凌も要が好きだった。
と、いうことで合ってるよね?普段あんなに人の恋愛に興奮しまくって醜態を晒しているのに、自分のことになるともじもじと恥ずかしそうに話している。凌にも人並みの羞恥心があったことにちょっと驚いた。
「なんというか、春だねぇ」
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