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チャンスは突然に
「・・・よし、OK!衣装チェンジして次行こう!」
「はーい」
控え室に向かうとアシスタントに新しい衣装を手渡される。着ていたチェックのセットアップを脱ぎ、黒のスラックスとオーバーサイズのシャツを合わせたスタイルに着替えた。先程は前髪を下ろしラフに散らしていた髪も、軽くサイドパートで分けられセットされる。
スタジオに戻るとスタンバイ済のカメラマンの元へ。ポーズはフリースタイルなので落とされるシャッターの音に合わせて好きにポーズをとっていく。カメラと繋がれたパソコンではタイムリーに撮られた写真が映し出されており、時折画面を確認しつつ角度を調整して動く。
「やっぱ、凄いですね」
「本当、流石私の息子だわ」
画面の横で写真を確認しているカレンちゃんと見学をしている嵐ちゃんが視界に入る。今日はカレンちゃんのブランド、T.KRNの夏に向けてのカタログ撮影。お正月ぶりの撮影に気分も上がる。
「レイラ!今日いい感じだわ!いい意味で気怠い色気があってセクシーよ!」
「カレンちゃん本当ー!やったー!!」
カレンに褒められると最高に嬉しい。だってカレンちゃんは俺の夢の師匠だから。
「本当昨日の夜酔っ払って帰った挙句に夜中まで元気に楽しんでたみたいだから、今日ふざけた撮影したらぶっ飛ばそうと思ってたのよ〜」
「・・・カレンちゃんごめーん」
まさかの発言に先程の喜びから一気に顔が引き攣った。いや、隠してないからいいんだけど。あれだよね、やっぱあんなに騒いでたら気付くよね!俺昨日めっちゃ号泣してたんだけどそれも聞こえてたのかな!?いや、流石に十六弥くんやカレンちゃんの部屋までは会話の内容まで聞こえないよね・・・?
「レイラの泣き声が聞こえた時は部屋に乗り込もうかと思ったよ」
「俺も」
両隣のカエルとサハラにはバレた。そこは諦めてたから、仕方ない。恥ずかしいけど・・・。むしろ夜中にごめん。
「俺の天使が・・・くそっ、日本の侍に・・・」
「ジェイデン!準備出来てるなら早くスタンバイして!」
今日の撮影にはカエラ達もいる。カエラとサハラも小さい時から一緒にモデルをしている。でも二人はモデルを目指している訳ではないから、カレンちゃんのためにずっとT.KRNの専属だ。
ジェイデンは学生をしながらだけど、たまにコレクションや雑誌などでもモデルをしている。カレンちゃんの事務所に入っているから昔からよく撮影でも顔を合わせていた。
「カレン」
「なに、ダニー」
カメラマンのダニーはこの業界でも凄腕で有名。でもデビューしたての頃のカレンちゃんに惚れ込んで、カレンちゃんが事務所を作ると同時に事務所の専属カメラマンになった。カレンちゃんの魅力は留まらないからね。わかる。
「そろそろレイラの顔、出してみないか」
「ふふ、私も思っていた所よ」
「!!!」
今なんて言った二人は!!顔を出す?それって、そういう意味だよね?間違ってないよね?どうしよう・・・泣きそう。
「良かったな」
「嵐ちゃ〜ん」
「泣くな泣くな」
嵐ちゃんに言われカレンちゃん達に微笑まれると我慢出来ずに涙が流れ出る。まだ撮影の最中なのにどうしよう。止まらないかもしれない。
「レイラ、頑張ったわね」
「カレンちゃんありがとう〜〜〜」
「デカくなっても泣き方はチビの頃のままだな」
カレンちゃんに抱き着くとギュッと抱き締め返してくれる。その温もりのせいで余計に涙が溢れる。ダニーに頭を撫でられ笑われるけど、嬉しいから気にならない。
「え、なになに」
「なんでレイラが泣いてるんだ?」
「ダニーにぶちギレられたのか?」
衣装チェンジを終えて戻ってきたカエラ達や、周りにいたモデルやスタッフは驚いていたが、事情を知ってみんなも大喜びをしてくれた。
「まぢか!おめでとうレイラ!!」
「やっと念願のデビューか!!」
「私達はずっとプロとして見ていたけどね!」
「おめでとうーー!!」
みんなに喜ばれスタジオ内に拍手の音が響く。やっとここから俺の夢の第一歩がスタートするんだ。
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