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夢への大きな一歩
「この条件は守るのよ」
「うん」
モデルとしてデビューするにあたってカレンちゃんから出た条件は、まずはカレンちゃんが決めた仕事をこなすこと、メディアへの取材はなし、そして仕事は学校が休みの時だけ。
あくまで学業を優先するということ。大学まで卒業しているとはいえ、俺は今高校生。高校生として過ごせるのは残り二年もない。今しか出来ない学生は、今めいいっぱい楽しむべき。そう言われた。
「スタジオでの撮影なら日本でも出来るわ。でも学校に支障が出ない程度によ」
「わかった」
その後の撮影でのテンションの上がり具合がすごく、楽しくてあっという間に終わった。これからは今よりたくさんの撮影が出来ると思うとわくわくする。
それと同時に顔を出すということで今まではなかった色々な評価が出てくるだろう。その評価が良いものになるか悪いものになるかは俺次第。今まで以上に気合いが入る。
「ちなみに私、嵐太郎のことも狙ってるの」
「俺ですか?」
「そう、モデルに興味が出たらいつでも言ってね」
「考えときます」
そうカレンちゃんが嵐ちゃんをスカウトしている。実は前々からカレンちゃんは嵐ちゃんがモデルにならないかと俺に聞いていたのだ。日本人にはなかなかないスタイルの良さは勿論、カレンちゃんは嵐ちゃんの顔も大好きだったりする。だって嵐ちゃんって、十六弥くんの若い時にちょっとだけ似てるから。
「レイラったら面食いよね」
「カレンちゃんだって〜」
「この手の顔どストライクなの」
「俺も〜」
別に顔だけで嵐ちゃんを選んだ訳では無いけど、タイプなのは間違いない。ちなみに十六弥くんも嵐ちゃんもカレンちゃんや俺の顔がタイプだと言うからお互い様だよね。俺は兄弟の中でも一番カレンちゃんに似ていると言われるから。
「確かに二人を見てると昔のカレンと十六弥を思い出すな」
カレンちゃんと付き合いの長いダニーは勿論十六弥くんのことも知っている。二人は10代で出会って十六弥くんが21で、カレンが20の時に結婚した。そしてその翌年には俺達が産まれたんだ。確かに出会った頃なら丁度今の俺達くらいの年齢ということになる。
写真では見たことがあるけど、その時の二人に会ってみたいな。親としての二人とはまた違った雰囲気を持っていたに違いない。
「嵐ちゃん嵐ちゃん」
「どうした?」
「俺達もカレンちゃん達に負けないくらい10年先も20年先も仲良しでいようね」
ずっとラブラブな二人を見てきたから、俺の理想のパートナーのイメージは十六弥くんとカレンちゃんだ。お互いを尊重し、お互いを大切にし、支え合っている。そんな関係を出会った時から変わることなく続けている二人のようになりたい。
「そうだな」
そう優しく笑う顔を見ていると、嵐ちゃんとならそれが実現出来ると思える。
テンションが上がりまくったおかげで予定より撮影は早く終わった。相変わらず嵐ちゃんに敵対心を剥き出しだったジェイデンは、この後大学の授業があるので渋々俺達とはわかれて大学へ向かった。
久々に一緒に撮影をしたけど、ジェイデンは黙っていればモデルとしては一流だ。3つの歳の差以上に大人びたかっこよさがある。まあ、昨日までの俺への気持ちを隠した状態のジェイデンは、普段からもかっこよかったんだけど。
「この後スティーブの店寄って行こうよ、嵐ちゃん紹介したい」
スタジオの近くにある行きつけのアクセサリーショップ。そこのオーナーには昔シルバーアクセの加工を教えてもらった。今嵐ちゃんがつけているピアスや指輪はその成果なのだ。
「本当にお前ら知り合い多いな」
「まあね!」
「嵐ちゃん見せびらかしたらダダンでタルト買って帰ろうよ!」
「レイラのデビュー祝いしないとね」
そうだ!帰って早く十六弥くんにもデビューの報告をしなくちゃ!!
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