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猫耳
ガタガタと揺れつつ少しづつ坂を登っていく。それはまるで空へ向かって登っているようで天気のいい今日は綺麗な青空が目の前に広がる。高い所からの光景にソワソワしていると、急に上を向いた状態が平行に戻り、息をつく間もなく真っ逆さまに地上に向いて落下する。
「いやっほぉぉおぉおぉい!!!!」
前からのすごい風圧を感じながらゆっくり登った高さから一気に地上に向かう。そして地面にぶつかりそうな勢いで急カーブし、回転し次々と視界が変わっていく。
「やばい!めっちゃ楽しい!!」
「なかなか迫力あるな!」
いつもより若干テンションの高い真斗が可愛い。風圧で髪もくしゃくしゃになっているのでよりそう感じる。
スピードを落としながら終点に到着し、安全バーを外してジェットコースターから降りる。この遊園地は絶叫系に力を入れているらしいが、期待以上かもしれない。
「レイラレイラ!!あれ付けたいだろ!?」
「確かに、お前付けたいだろあれ」
「あ〜レイラああいうの好きそうだよな」
「え!レイラ君あれ付けるの!?絶対可愛い!!」
「レイラなら似合いそうだな」
騎麻が売店を指差しながら嬉しそうにしているのに他のみんなが同意する。まあ確かに遊園地ってああいうの売ってるよね。
「え、何で俺そんなに耳付けたいイメージなの」
遊園地のマスコットでもあるネコのキャラクターのモチーフのつけ耳。あまりにみんなにすすめられるのでとりあえず一番シンプルな耳だけのカチューシャを付けてみた。近くにあった鏡でその姿を確認してみる。
「普通に似合うよね、うん」
まあ予想はしていたけど、白猫モチーフの耳が違和感無く頭の上にのっている。こういうの似合うんだよね、俺。
「よし、買ってやるよ」
「・・・俺だけ付けるのはやだよ」
嵐ちゃんが問答無用で買ったカチューシャを俺の頭に再びつける。別に耳を付けるのはいいんだけど、一人で付けるのはちょっと・・・。
「みんなも付ければいいのに」
「そうですよー!みんなで耳つけましょうよー!」
とりあえず第一発見者の騎麻と鷹は猫耳仲間に引き入れることに成功したけど、あとの三人は断固拒否。俺としては嵐ちゃんにあの黒いふさふさの狼の耳をつけて欲しかった。
その後はまた近くのアトラクションから手当り次第に回っていき、5つのアトラクションに乗ったところでお昼にすることにした。それにしても・・・
「みなさんお友達ですかー?」
「良かったら私達と一緒に回りませんか?」
「近くで見ると更にかっこいい!!」
先程から少し歩く度に代わる代わるに声をかけてくる女の子達。同い年くらいの高校生から大学生や社会人にまで声をかけられる。まあ平均身長を軽く超えている上に私服だと、嵐ちゃんやのいちゃんはまず高校生に見えないからだろう。
「今日はみんなで楽しんでるからごめんね」
と、いつもの万人受けする笑顔で優しく断る騎麻に対して、
「・・・・・・」
「間に合ってるんで」
「レイラ君より可愛い子にしか興味ないんで!」
「こいつの面倒見るんで手一杯だ」
無言でスルーの真斗に無関心の嵐ちゃん、馬鹿な鷹に邪魔だとでも言うようなのいちゃん。みんなもう少し優しい断わり方をした方がいいと思う。
「え、すごい綺麗!この後一緒にどうですか?」
「Non capisco il giapponese(日本語分かりません)」
俺の返事にぽかんとした顔で固まる女の子。いやー、俺実は知らない子苦手何だよね。友達の友達とかは平気なんだけど、全く知らない人はちょっと。
「いやいやいや!色んな国の言葉で断ってるレイラ君も大概だと思うよ!」
「だって知らない人にベタベタされるの苦手なんだもん〜」
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