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本日は快晴なり

「!!」 「っあぶね!」 ギリギリでスピードを殺したボールが緩やかなアーチを描いて敵の手にキャッチされた。ボールを取れたことに驚いたような様子の大きな瞳がぱちぱちと瞬きをしている。 「危ない危ない。渚くん吹き飛ばすとこだった」 「こらレイラ!!キャッチボールしてるんじゃないんだぞ!!」 「なに、緩やかにパスしてんだよ!!」 敵にパスをしたことで味方からのブーイングが。いや、だって渚くん本当に吹っ飛んじゃうから。俺意外と力強いし。 「レイラくん」 「あ、渚く・・・」 ヒュンッ 「!?」 てこてこっと小走りでセンターラインまで来た渚くんが腕を振り上げてボールを投げる。そのボールが思った以上の勢いで飛んでくるもんだから、一瞬怯んでしまった。 え、渚くん、めっちゃ球速いんですけど。 「俺、キャッチは苦手だけど、投げるのは得意だよ」 「まぢか!!」 予想外の攻撃に驚きはしたけど、面白い。 ピーーーッ 「試合終了!10-4で2-Sの勝ち!」 体育委員の吹く笛で試合が終了し、同時に俺達の二回戦出場が決まった。それにしても、なかなかハードだ。走り回ることは無いが、みんなそれなりにボールが速いため気が抜けない。 「お疲れー」 「大活躍だな」 近くで見ていたらしい凌と要。次のバレーまではあと少し時間がある。ハンドも今は試合をしていないので、つかの間の休憩時間といったところだ。 「ハンドの調子は?」 「とりあえず一回戦は勝った」 にやりと笑う要の表情で手応えを感じているだろうことが察せられる。去年も思ったけど、うちのクラスはなかなかの強者揃いだと思う。 「優勝したらレイラがメイド服着てご奉仕してくれるって、迅が言ってたからみんなやる気出てんだろ」 「ちょっと待て待て」 「お前も随分体張るな」 「ちょ、えぇー・・・」 何勝手なこと言ってんだよ迅。しかもそんなんで、やる気出るの?ほぼ毎日見てる俺なのに? 「毎日見ててもやっぱレイラ君は美人だからね」 「顔だけは国宝級だな」 「うるせぇ、身体も国宝級だわ」 まあ、別にそれでやる気が出るならメイド服くらい着るけど。なんならセクシーなポーズの一つや二つやっちゃうよ? 「じゃあとりあえずノーパンで開脚な」 「やだよ。凌にやらせなよ」 「え゛!?」 どっちにしろうちのクラスは元々お祭り好きの集まりだから、十分やる気に溢れている。勝手に俺を出しに使った迅はあとでしっかり問い詰めておこうと思う。 「うわ、あそこ人多いなー」 「バレーのコートか・・・きっと3-Sあたりが試合してるんじゃないかな」 「あーそんな感じする」 俺達も勝ち進めば三回戦で3-Sにあたる。その前に二回戦で2-Eのスポーツ特待にあたるから、どの試合も気が抜けない。それにドッジの方も次は3-Sにあたるからそっちも一筋縄では行かないだろう。 次の試合が近づいているので要とはわかれ、凌と体育館へと向かう。 いやー、それにしても体力持つかな。 気持ちのいいはずの日差しが俺には敵でしかないのだ。試合意外も出来るだけ日陰にいた方がいいかもしれない。干からびる。 あと、あんま目立つ所にいると・・・ 「レイラ君今日も可愛いねぇ」 「美しい生足・・・」 「お疲れ様です!タオル使いますか!?」 いっぱい人が集まってくるんだよなー。みんなが話しかけてくれること自体は嬉しいんだけど、出来上がった人集りでなかなか身動きがとれない。あと暑い。 「お!レイラじゃん!飴食うか?」 「食べるー・・・でも先に日陰に連れてって・・・」 ジリジリと日差しに炙られていた所に通りかかった晃太くん。笑顔で飴玉を差し出してくる姿はとても太陽が似合う。 「ほらほら、レイラが暑さで溶けちゃうだろー、みんな散った散ったー、囲む時は日陰にいる時にしろー」 「ありがとー」 晃太くんによる交通整理によりどうにか日陰に着くことが出来ほっとした。こういう時に要が一緒だと問答無用で人を割って突き進んでくれるんだけど、凌はみんなの気迫に押されてしまうので一緒にへとへとになっていた。

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