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いたずら好きの大人達
「あーもう十六弥くんそれ俺のぉ〜っ」
「世の中はな、弱肉強食なんだよ」
「ああ!!!全部食べた!!!」
ひどい。風呂上がりに食べようと思って楽しみにしていたアイスが目の前で消えた。ソファーにその長すぎる体を横たえた状態でこちらをドヤ顔で見てくる。なんで俺のアイス食べといてドヤ顔なの!?
「いじめだ!」
「こんなんいじめに入らねぇだろ。お前の周りは甘い奴ばっかだからな」
甘ったれやがってと呆れた顔をされた。え、俺が悪いの?俺のアイス食べたの十六弥くんなのに俺が駄目なの?
「十六弥、あんま子供をいじめるなよ」
「亜津弥くん!?今食べてるのも俺のケーキ!!明日食べようと思ってたのに!!」
「そうか、悪いな」
全然悪いと思ってないじゃん〜〜〜っ。
「レイラ、」
「カレンちゃん・・・」
「諦めなさい」
なんだろう、俺の扱いがひどい。いや別にいつも通りなんだけどさ。カレンちゃんが慰めるように頭を撫でてくれるけど、今飲んでるのも俺のジュースだよ・・・。何でうちの大人達は俺をいじめるのが好きな人ばっかりなんだろう。そしてなんでみんな俺の隠してるおやつの場所知ってるの。
もう怒るのも拗ねるのも諦めた。だって俺に勝ち目はないんだから。別にアイスがベルギーからわざわざ取寄せした濃厚チョコレートアイスだとか、何時間も並ばないと買えない人気のケーキ屋さんのケーキだったとか、季節限定でもう売ってないジュースだとか気にしてないから!!
「あれは完全に拗ねてるな」
「ずっと楽しみにそわそわしてたもんな」
「泣かなくなったなんて成長ね」
「「「かっわい〜」」」
しょんぼりしてる俺を見て大人達がそんなことを言っているとは知らず、ただただ落ち込む俺。
夏休みに入ってすぐに騎麻と真斗と一緒に本家へと帰った。そしてそれに合わせて日本にきた十六弥くんとカレンちゃん。去年と同じくカエラとサハラの学校よりも天羽学園は一週間早く夏休みへと突入したので、今俺を慰めてくれるお兄ちゃん達はいない。
居たら慰めてくれただろう騎麻は俺と入れ替わりで風呂に行ってしまったし、真斗はティノと庭でボールで遊んでいてこちらの様子に気づいていない。
「みんな、俺の事嫌い?」
「そう思うか?」
俺の問いに対して、そんな分かりきったことを聞くのか?とでも言うような大人達の表情。わかるよ、わかってるよ!!
「好きな子いじめるとかちっちゃい子だからね!!」
十六弥くん達が俺を嫌いなはずが無い。それが分かっているので毎回いじめられつつも結局は許してる自分がいるんだけど。悔しいのでソファーに相変わらず転がったままの十六弥くんの上に飛びかかる。それでも重さを全く気にした様子がないのでダメージはないのだろう。そのままラッコの親子の様に十六弥くんの上に寝転がる。
「毎回毎回いい反応で楽しいやつだな、ほんと」
「・・・俺は楽しくない」
笑いながら頭をぐしゃぐしゃと豪快に撫でられる。俺はみんなの玩具ですか、そうですか。それでみんなが楽しいなら別にいいけどさ。
「レイラ、実はこのケーキ、明日同じのを届けてもらう約束をしてる」
「このジュースも、実は同じのを買って隠してるの」
「・・・・・・もぉー!!!」
にやにや顔の亜津弥くんとカレンちゃんの言葉に一気に脱力した。ほんと、その計画的な悪戯はなに。
とりあえず俺の明日の楽しみは奪われていなかったらしい。それににこにこ楽しそうなカレンちゃんがとても可愛いので全て許す。
「アイスは無いからな」
「!!」
俺を抱えたまま爆笑する十六弥くんはどこまでもいじめっ子だ・・・。
こんな感じに俺の二回目の夏休みがスタートしました。
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