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死角を狙え

パンッ 「っ!?くそぉ〜っヒット!」 胸元に急に飛んできたBB弾を避ける間もなく当たった和彩が悔しそうに手を挙げてヒットを宣言する。サバゲーでは攻撃を受けた際は“ヒット”と自ら宣言するのが決まりだ。 「ふふふ、敵が地上にいるとは限らないよ」 「わっ、そこからか〜っ」 木の上に潜んでいた俺を見上げながら悔しそうにする和彩。実は俺は自分の身軽さを武器に、敵陣の手前にある大きな木に登り近くを通る敵を頭上から狙っていたのだ。 「この先には行かせないぜ」 と言っても木の上からの攻撃はあまり広い範囲は狙えない。多分今の和彩の声を聞いてこの辺りに敵がいるのはバレているので、俺も移動しなくては。 周囲に人がいないことを確認し、枝から飛び降りる。膝のバネを使い着地の衝撃と音を最小限に落とす。そのまま辺りを確認しつつ敵陣へ近づいていく。 俺達は特攻部隊ではあるけど、出来るだけ自陣に攻めてくる敵の数を減らしておきたい。 ガサッ 「!」 少し離れた所から葉っぱを踏む音がした。近くに誰かいるみたいだ。出来るだけ姿勢を低くし、木の影に隠れながら進む。 (風月か・・・) 小型のピストルを手に辺りを警戒しながら進む風月を発見した。距離としては約30m。飛距離としてはギリギリ届く範囲だが、足の速い風月を思うとこのまま10m程近付いて命中率を上げたい。 少しづつ少しづつ隠れながら距離を詰めていく。予定の射程範囲に入ったところで銃を構えた。 「ごめんね風月・・・」 パンッ 「!」 「風月!!」 風月に向かってBB弾を撃ち込んだ直後、何処からか聞こえてきた声に素早く反応した風月がサッと身を屈めることでBB弾を避けた。 「助かった!騎麻兄!!」 「妹を守るのはお兄ちゃんの役目でしょう!」 そう、突然どこからとも無く現れたのは騎麻だった。そして弾の軌道から位置がバレた俺の方へと猛ダッシュで向かってきたのだ。 「まぢかよっ」 こうなったら逃げるのは難しい。どうにか迎え撃つ。せめて相打ちにもっていきたい。そう思いエアガンを構えるが角度が悪い。 「くそ・・・駄目か」 騎麻がもうすぐ側までやってきた。ーーーその時。 パンッ 「!!」 「ぅわっ」 聞こえた銃声と声を上げる騎麻。そのまま手を挙げ、ヒットと宣言した。 「危なかったな」 丁度対角の茂みから姿を現しゆっくりこちらに歩いてくるのは・・・ 「嵐ちゃん!」 そう、そこには嵐ちゃんの姿が。いつの間にそこに隠れていた嵐ちゃんのおかげで助かった。俺も隠れていた木の裏から出ていき嵐ちゃんと撃たれた騎麻の元へ。 「俺の勝ちだな」 「やられたなー・・・、まさか嵐が隠れていたとはね」 「騎麻だって隠れてたくせに」 「可愛い妹の危機だったからね」 そういえばその風月の姿が見えない。さっき騎麻が走ってきていた時に、反対側へと走る姿がちらりと見えたのでどこかへ逃げてしまったのか。 「風月は逃げたか・・・」 「大丈夫、向こうにはカエラが隠れている」 「わー・・・風月無事かな・・・」 風月を心配しつつも弾に当たった騎麻は失格なのでその場を去っていく。嵐ちゃんの言う通りなら多分今頃カエラが風月のことも捕らえているかもしれない。 順調に敵を減らしてきている。それにこちらには何様俺様十六弥様が特攻隊長にいるのだ。 「もしかしたらもう十六弥くんが相手全滅させてたりして〜」 「流石にそれは十六弥さんでも難しいんじゃないか?」 まぁそれもそうか。敵には亜津弥くんも玲弥ちゃんも、真斗だってまだ残っているはず。そうなれば流石の十六弥くんも簡単には勝つのは難しいだろう。

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