256 / 311
終わりも突然
と、思っていたのに。
「ぇえーーー!?もう勝負ついちゃったの!?!?」
あの後すぐ嵐ちゃんとは分かれ手分けして敵陣に向かった。その途中誰にも会うことなく誰にも攻撃されることなく。
その理由は、なんと十六弥くんが残りの4人をやってけてしまっていたのだ。・・・そう、4人とも。
「早すぎ!!もっと時間かけて!!」
「まだ30分も経ってないし・・・」
「そうよ十六弥ぁ〜私達のとこ誰も来なかったわよ〜っ」
森の中を動き回っていた俺達とは違い、旗の周辺で守りに徹していたカレンちゃん達は敵の姿すら見ていないらしい。確かにそれはちょっとつまらない。
「しょうがねぇだろ。進んでたらすぐに旗取れちまったんだから」
「いや進むってか突進してきてたから」
「笑いながら銃ぶっ放す十六弥本当に怖かったんだから!!」
「・・・殺されるかと思った」
十六弥くんに襲われた亜津弥くんと玲弥ちゃん、真斗はよっぽど怖かったのか顔が引きつっている。・・・小さい頃から十六弥くんの無双っぷりを見て一緒に育った弟妹ですら、その存在を恐れるとは。恐るべし十六弥くん。
「日本だとエアガンの規制厳しくて緊張感がないんだよなぁ。当たってもそこまで痛くもないし」
「痛い!?痛い!!近いし痛い!!!」
「十六弥君危ない!痛い!!」
近距離でエアガンを向ける十六弥くんの攻撃を受けた俺とカエラ。駄目でしょそんなことしちゃ!普通に虐待だから!!痛いよまぢで!!
まあそんな感じで十六弥くんが突然始めたサバゲーは、突然終わらされた。どこまでもゴーイングマイウェイ。十六弥くんが言うことがルール。世界は十六弥くんを中心に回っている。
「まあまあみんな、華南ちゃんがデザートつくってくれたから食べよ」
「もう少しお腹空かしてから戻ってくるかと思ってたくさんつくっちゃったわよ」
テントに残っていた華南ちゃんがみんなのためにクレープを大量につくってくれていた。キャンピングカーのコンロを使いフライパンで生地を焼いたらしい。テーブルに並べた大量の皿に山盛りのクレープ。きっと作るのが大変だっただろう。それを何故麻紀くんがすすめるのか。
「おいしそー!!俺いちごのがいい!」
「俺バナナのやつ!」
「こっちにあるのはトッピング自由よ」
「カスタードもある?」
昼ご飯を食べてそれ程経ってはいないが、スイーツは別腹ということか、次々とクレープの山が減っていく。
「おいしい〜っ」
「みてみて!全部のせ!」
全く動いていないはずの柚乃とカエラの甘党コンビの食べるスピードが凄まじい。吸い込まれているようだ。クレープも飲み物なのか。すごいな。
「レイラちゃんのために愛紗がつくったよー!」
「ありがと〜」
「嵐ちゃんのもつくったから食べて!」
「ありがとう愛紗」
愛紗が俺と嵐ちゃんの分のクレープをつくってくれた。いつもは和彩と一緒に馬鹿騒ぎしている愛紗だけど、こういう時に女の子だなぁ〜と思う。そのままいい子に育ってください。
いやぁ〜それにしても、愛紗のつくってくれたクレープだけど、すごい。バランスなどは一切無視したてんこ盛りの具を無理矢理丸め・・・ることが出来なかったようだ。俺の知っているクレープの見た目とは多少、というか大分違う。つまり、ボリュームと愛紗の愛はたっぷりだ。
「嵐ちゃんブラックコーヒーもらってきてあげるね」
「・・・頼む」
俺もそこまで甘党ではないけど普通にスイーツは好きだ。嵐ちゃんも苦手なわけではないけど、この量はちょっと厳しいのだろう。少し顔が引きつっている。折角愛紗がつくってくれたからね、ちゃんと食べきらないとね。
「レイラちゃん嵐ちゃん〜!もう一つつくったよ〜!!」
「・・・わーい」
いや、俺はいいんだよ。全然腹にゆとりありますし?ただ嵐ちゃんにはちょーっと多いかな?ほら、まださっきのやつ9割くらい残ってるし。
・・・・・・・・・嵐ちゃんがんばれ。
ともだちにシェアしよう!