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夏祭り

夏休み残り2日。明日には寮に戻る。 相変わらずの目を開けるのも辛いくらいに眩しい日射しと、何もしなくても汗が吹き出る程の暑さ。今年の夏はだいぶ本気を出しているらしい。 数日前に十六弥くんとカレンちゃんはイギリスに戻ってしまったし、玲弥ちゃん達家族もアメリカに戻った。広い常磐の本家もいつも以上に広々と感じる。 「さあ、出来ました。みなさんお似合いですよ」 長く常磐に仕えてくれている使用人である潔子が満面の笑みを浮かべる。鴻來くんやリディアちゃんよりも歳上で、みんなのグランマ的存在の潔子。 その潔子により、俺達は今夜近所である夏祭りのために浴衣を着付けてもらっていた。 「すごーい!潔子着付け上手!」 「レイラあんまはしゃぐと祭り前に着崩れるぞ」 「浴衣って案外涼しいな」 先に着付けが終わっていたカエラとサハラ。涼し気な白から濃紺のグラデーションに薄く絞りの模様が入ったお揃いの浴衣にテンションが上がる。 「「「なんか侍って感じ」」」 「完全に観光客の外国人だな」 俺達と順番で着付けをされている騎麻につっこまれるが、あながち間違いでもないので否定はしない。日本語がペラペラなことを除けば、俺達完全に外国人だし。 騎麻はくすんだグレーに白い縦縞の入った浴衣。赤いラインの入った帯がアクセントになっていてかっこいい。侍。 「本当に真斗は浴衣着ないの?」 「俺は楽だから甚平でいい」 ソファに転がってこちらの様子を眺めている真斗はすでにシンプルな黒地の甚平を着ている。確かに浴衣よりも動きやすそうだ。 今日はこの後嵐ちゃんと合流してから祭りに向かう。暗くなれば花火も上がるらしいので楽しみだ。屋台もたくさん出ると聞いているし、わくわくが止まらない。 「嵐太郎来たぞ」 一緒に祭りに行く予定の嵐ちゃんが丁度やってきたようだ。出迎えてくれたらしい亜津弥くんに連れられて部屋に入ってくる。外が暑かったのかTシャツの首元をパタパタと扇ぎながら。 「えぇ〜嵐ちゃん浴衣じゃないじゃん」 「浴衣とか持ってないからな」 そんなぁ〜・・・。夏祭りは浴衣を着るのが決まりだと前に十六弥くんが言っていたから楽しみにしていたのに。というか、浴衣を着ないと夏祭りに参加出来ないんじゃないの? 「レイラ、一応言っとくけど祭りにドレスコードなんて無いからね」 「・・・知ってたし」 俺の考えがバレていたかのように騎麻が確認をしてきた。どうやら俺はまた十六弥くんに騙されていたらしい。特に何のダメージも無い内容なのに、騙されていたと思うと少し悔しい。いや、嵐ちゃんの浴衣姿はちょっと期待していたけど。だって絶対かっこいいじゃん。間違いない。 「なんだ嵐太郎、浴衣無いなら俺の着てけよ」 「いや、別に・・・」 「折角みんな着てるんだ」 そういうと近くにいた使用人の一人に声をかける亜津弥くん。亜津弥くんと嵐ちゃんなら身長も体型も近いのでサイズも丁度いいはずだ。嵐ちゃんはその気が無かったみたいだけど、断ることも出来ずに遠慮気味にお礼を言っている。これでお揃いで祭りに行ける。 使用人が持ってきた藍色の浴衣を潔子によりしっかりと着付けられた嵐ちゃん。めちゃくちゃかっこいい。そして色気がいつものより倍増してたれ流されている。 「色気溢れてる隠して隠して」 「無茶言うな」 外が少しづつ暗くなり始め、昼間の暑さも少し和らいだ。みんなの身支度も整ったのでそろそろ待ちに待った祭りに繰り出そうか。 「見て嵐ちゃん、今日も小銭で財布ぱんぱん」 「だと思った」 ちゃんと屋台に行くためにお札の両替はばっちりだぜ。おかげでいつもはほとんどカードしか入っていない財布がぱんぱんに膨らみ悲鳴を上げている。

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