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射的!金魚すくい!くじ引き!

油の跳ねる音とともに肉の焦げる香ばしい香り。その隣には甘〜い飴で彩られた様々なフルーツ。小さな子供たちがくじ引きの屋台に群がっている。 「嵐ちゃん嵐ちゃん!!射的だって!!」 「見て見て!金魚すくい!!すっごいたくさん金魚いるよ!?」 「くじ引き・・・!やりたい・・・!!」 初めての夏祭りにテンションの上がった俺やカエラ、サハラは視界に入った気になるものを嵐ちゃんに報告していく。しかし三方向から裾を引っ張られる嵐ちゃんは、俺達の主張など気にせず唐揚げの屋台へと足が向かっている。 「射的やりたい!」 「あんなんお前らには簡単すぎだろ」 「金魚すくい!金魚すくいは!?」 「すくった所で学校始まったら持って帰らないだろ」 「くじ引きやりたいんだけど」 「本当にあの景品が欲しいか考えてみろ」 「「「・・・嵐ちゃんつまんない」」」 俺達が興味の向くままに屋台に引き寄せられるのを全て嵐ちゃんにより却下されてしまう。それもこれも、家を出る前に丁度仕事から帰ってきた華南ちゃんの指示だから仕方ない・・・。 家を出る前ーーー 「いい?こいつらは好きにさせたら全部の屋台を荒らして回るわよ。後先なんか考えないんだから。面倒になりたくなければちゃんと見張ってなさい」 華南ちゃん曰く、常磐の常識で育った俺達はたまにしばき倒したくなるらしい。・・・怖い。亜津弥くんと長年一緒にいるのに、華南ちゃんはなかなか手厳しい時がある。その理由は、 「ただでさえふざけた自分常識で生きてる集団なんだから、私くらいは一般常識を知っておかなければいけない」 ということらしい。実は弁護士の資格もそのために亜津弥くんと結婚してから取得している。でも十六弥くんはともかく、俺達はまだ普通だと思う。それも華南ちゃんの教育の賜物ということなのかな。 まぁそんな理由で、俺達は嵐ちゃんからのGOサインが出ない限りずっとステイ状態なのだ。なんだかお預けをくらっている犬のような気持ちだ。わんわん。 十六弥くん達とこういった祭りのようなイベントに行くと気になった店はとりあえず全部を回っていく。まあ俺達が行くフェスや市場のような所では食べ歩きがメインではあるけど。 そもそも嵐ちゃんだってお金持ちなんだから言う程こういった場所に来たことがないはずなのに。 「嵐ちゃんだって祭りの正しい遊び方とか知らないでしょ」 「こういう祭りで10万も金用意しないのは俺でもわかるぞ」 それは今日俺達が祭りの為に持ってきたお小遣いの金額。十六弥くんはそのくらい使ってた。 「せめて3万くらいだろ」 「だって足りなくてもカード使えないって聞いたし」 その後やっと嵐ちゃんからの許可がおりたフランクフルトをお預けの反動で5本づつ買い、隣の屋台で唐揚げも特大サイズをそれぞれ買った。美味い。 人が増え始めたためとりあえずメインの通りから離れ人の波から抜ける。 「お待たせ」 途中から真斗について違う屋台に並んでいた騎麻達が両手にたこ焼きや焼き鳥を持って戻ってきた。 だいぶ食べ物が集まったため、一旦ここでご飯タイム。人が少ないここであればゆっくり食べることが出来る。と言ってもメインの通りが目の前のここはそれなりに人目があった。 「え、何あのイケメン集団」 「何かの撮影?」 「身長高っ」 こちらにちらちらと視線を送ってくる人の多さ。普段から視線には慣れているので気にはならないが、多分そろそろ視線だけではなく果敢に乗り込んでくる人が出てくるだろう。 「あの〜、みなさん地元の人ですかぁ?」 「良かったら私達と一緒に回りません?」 「花火の穴場も知ってるんですよぉ〜」 「え、待って、もしかして三つ子ですか!?」 女子大生らしき4人組が頬を赤く染めつつ声をかけてきた。浴衣を着、髪もしっかりとセットされており、上目遣いで見上げてくる。といっても、俺達の身長だと上目遣いにならない女の子の方が珍しいけど。

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