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赤組大将はこのくん

「では、人数も揃ったようなので早速赤組の決起集会を始める。まずは俺から挨拶をさせてもらう。赤組の大将を務めることになった近衛悠仁だ」 1チーム約260人の大所帯。それを纏めるリーダーである大将は三年生だ。そして赤組の大将は今挨拶をした通りこのくんが務める。風紀委員長として普段から学園を纏めている一人であるため、講堂内には一斉にこのくんを賛称する拍手と歓声が上がる。普段から真面目で誠実なこのくんへの生徒からの信頼と期待の現れだ。 ちなみに白組の大将は騎麻。同じく学園をトップである騎麻に同じように隣の講堂から上がった歓声。うちのトップ達はどちらも生徒からの人気がすごい。 「そして、この人数を纏めるために各学年にリーダーを置く。二年からは常磐レイラ、一年からは常磐真斗」 流石にこの人数を一人で纏め上げるには限界がある。その為補助役として活動するリーダーをつくった。それが俺と真斗。俺達が白組だったらこれが騎麻と揃って全員常磐になるところだった。 俺達にもこのくんの時と同じく割れんばかりの歓声が上がる。なんだかアイドルのコンサートのようだ。みんな落ち着け。 講堂に集まった時点で種目の希望を記入していたので、人数の偏りを調整していく。今年は人数が多いこともあり団体種目が多くなっている。 「・・・なんとか決まったか」 新しい種目も増えたため説明を挟みつつなんとか種目決めが終わった。クラスに関係なく他クラスと入り交じった編成が多く見られる。 クラスを半分に分けより多くの他クラスの生徒と接するようにしたのは、交流と意見の幅を広げるため。その意図にあったこの種目分けの結果に生徒会メンバーと視線で頷き合う。 「同じチームよろしくね」 「今年は手が抜けないな」 今日は顔合わせと種目決めだけだったため解散後はそのまま寮に戻った。一緒に帰ってきた嵐ちゃんが定位置のソファーの左側に座る。 「嵐ちゃんは騎馬戦と棒倒しだっけ」 「そう。あとリレーだな」 去年の棒倒しで活き活きとした顔で人をなぎ倒していた姿を思い出す。あの時の嵐ちゃんはとても楽しそうだった。きっと去年以上に無双状態になることが想像出来る。ま、去年は最終的には俺のチームの大将に負けたんだけどね。 「レイラ、お前あんなに種目出て平気なのか?」 「ん〜、まあ今年はアンケートのこともあって俺に拒否権ないからな〜」 言い出しっぺは責任を取らないといけないんだよ。そんな俺の出場種目は騎馬戦、女装レース、チャンバラ合戦、借り人競走とそしてリレー。そしてこれは俺だけじゃないけど、学年別種目などもある。去年も比較的種目や出番は多かったし、まあどうにかなるだろう。そろそろ俺も貧弱キャラを脱出したい。 「今年も十六弥さん達は来るのか」 「勿論。・・・その為に保護者参加の競技まで作らされたし」 そう、今年は保護者が参加する競技がある。それというのも十六弥くんから電話があり、 『見てるだけはつまらん。俺も参加させろ』 というのだ。・・・まあ俺としても、家族が参加するというのは交流の場としてもいいと思う。普段から離れて暮らしている親子の学園でのイベントというのは、いい思い出にもなると思うのだ。 ・・・どう考えても十六弥くんが優勝する姿しか想像出来ないけど。 公私混同と言われてしまえばその通りだけど、この学園の生徒の保護者はあまり体育祭は見にこない。来たとしてもそれは子供の勇姿を見るではなく、コネクションを作りに来る場合がある。というのも、去年の体育祭では今までの体育祭の約5倍の保護者が観覧に来た。しかもその目的が俺や親の十六弥くん達を見るためだったというからどうかしている。 全ての人がそうだったとは思わないけど、子供ではなくそちらを目当てにするというのはどう考えてもおかしい。そして今年は騎麻と俺にプラスで真斗も揃う。確実に今年も観覧に来る保護者の数も多いはずだ。 「折角来るなら巻き込んでやる」 十六弥くん達に媚を売る暇が無いようにに、そしてちょっとでも本来の子供の勇姿を見守る事に意識を向かせるために。 みんながみんなそういう考えではないのは分かっている。それでも去年その話を聞いた時に、それはおかしな事だと思った。

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