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楽しいお喋りタイム
次の日から本格的に始まった体育祭準備。種目ごとに分かれて練習や作戦を組んだり。去年はそこに応援合戦の練習もあったが、今年は生徒会の仕事もあるので断念。流石にそこまでの余裕はない。
団体種目は練習の日が決まっていて、今日は騎馬戦の練習日だ。今年は騎馬の組むチームは学年に関係なく自由なので、まずはチーム決めから始まる。
「え、何あのメンバー怖すぎでしょ・・・」
「・・・完全に勝ちにいってるな」
凌と要が引き攣った顔で見ているのは、あからさまに周りから飛び抜けた高さを誇る一つの騎馬。周りにいる赤組の生徒もその高さに驚きの声が上がっている。
「本当にこのくん上じゃなくていいの〜?」
「俺が上だと重くなるからな」
「嵐太郎高さ合ってるか?」
「いける」
土台は前がこのくん、左に嵐ちゃん、右にのいちゃん、そして騎手に俺。土台の騎馬が全員190cm超えという特大サイズ。見晴らし最高。
そういうルールは無いが大将のこのくんが騎手の方がいいんじゃないだろうか。しかし、それをこのくんに言っても問題ないと言って断られたので、有難く俺が上に乗らせてもらった。騎手の方が楽しいし騎馬役は重いし疲れる。俺が騎馬をして途中で体力が尽きたら大惨事だ。
騎馬戦では高さはなくてもが素早さのある騎馬が上手く敵を分散し、俺達のような高さのある騎馬は攻撃の要になる。しかも俺達は高さだけではなくパワーもスピードもあるため、実質上最強だ。
試しに何度か赤組内で模擬戦をした後は別れて個人種目の練習。と言っても俺の個人種目は女装レースと借り人競走なので特に練習らしい練習はない。
「今日グレーにブルーのラインの入ったパンツ穿いてる人〜」
「はーい」
「一緒にきてくださ〜い」
木陰にあるベンチに座ってみんなが走り回るのを見ながら借り人競走のお題風に声をかける。するとやる気のない返事が横から返ってくる。俺と同じく個人種目が団体競技ばかりで特に練習のしようがない嵐ちゃんだ。
「お題が特定すぎだろ」
「毎日チェックしてま〜す」
少し離れた所でしている応援合戦の練習を眺める。まだまだ練習が始まったばかりで全然形にはなっていないが、みんなが色々意見を出しながら動いている姿は楽しそうだ。
生徒会の仕事があるのでそろそろ練習を切り上げてそちらに向かおうかと思い、隣に座る嵐ちゃんへと視線をずらす。と、こちらを見ていた嵐ちゃんの目が合った。
「お前ぼーっとしてる時唇とんがるの知ってた?」
「えっ」
「今もとんがってた」
それは知らなかった。まあ、無意識なんだろうけど。それを知られていてこっそり見られていたと思うと少し恥ずかしいな。ぴよぴよ。
嵐ちゃんとはグラウンドでそのままわかれ、生徒会室に向かう。グラウンドや中庭、教室などでもそれぞれが体育祭に向けての練習や準備を進めている。こちらに気づいた生徒に声をかけられ、至る所で足を止めて少し話をしてからまた生徒会を目指す。それを繰り返していると思ったよりも時間が過ぎていた。
「レイラ君発見」
「こんなとこにいたのか」
「・・・やべ」
三年生の教室で応援合戦用の応援団旗を作っていた先輩に捕まり、話し込んでいる所に何やら資料を持ったまみちゃんとのいちゃんが通りかかった。
時計を見るとどうやらグラウンドを出発して軽く30分は経過している。完全に遅刻だ。ちらっと二人の顔を見ると呆れた顔をしている。えへへ。
「ごめーん」
「たく・・・、悪いがこいつは貰ってくぞ」
「はい回収回収〜」
逃げるわけでもないのにまみちゃんとのいちゃんの二人に両脇から抱えられ生徒会室の方へと強制連行。先程まで話していた三年生達が “ばいばーい” や、“また来てね〜” と言って見送ってくれる。ドナドナを歌うのはやめて。
ここから生徒会室までは目と鼻の先。あとちょっとの距離がなかなか遠かったようだ。
さてさて、遅刻した分しっかり働きますか。
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