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午前の部、終了

残りの種目も終え、午前の部が終了。団体種目で点を稼いだ赤組がリードをしているが、その他の成績からまだまだ逆転の可能性は高い。 「ぷっ、なにその顔!ほんと、二人とも何してんの!」 今年も家族で昼食をとることにしていた俺達は改めて見た十六弥くんと亜津弥くんの顔を見て吹き出す。カレンちゃんと華南ちゃんも笑いを堪えてるし、今が初見の騎麻と真斗は我慢しきれず吹き出している。嵐ちゃんや晴さん達は驚きで唖然としていた。 「十六弥が先に殴りかかってきたんだよ。俺はやり返しただけ」 「あんなやわな棒切れじゃ決着がつかなかったんだから仕方ないだろ」 お互いの拳が当たったであろう頬っぺたが赤く腫れている。いやいやいや、それにしても体育祭ですよ。何故殴り合いになるほど本気になってんだ。いや、二人がやり合っていてくれたおかげで周りへの被害がなくすんだんだけど。二人が他の人を襲っていたら勝負が一瞬でついてしまう。 「そりゃ生徒がメインの祭りなんだから他のやつに本気なんか出さねぇよ。そこまで親が目立つべきとこでもないだろ」 「・・・いや、身内で本気のバトルされても」 自分達が本気を出せば誰よりも目立ってしまうことがわかっていて、あえて亜津弥くんとだけ戦っていたらしい十六弥くん。確かにメインはあくまで生徒なんだけど、十分目立っていたと思う。 「十六弥くん達はだいぶ楽しんでるみたいだけど、晴さん達も楽しめてる?」 「あぁ、普段見れない姿を見れるだけで私達は楽しめているよ」 「ちょっと激しくて怪我が心配ではあるけど、つい応援に熱が入っちゃうわね」 にこにこの晴さんと麻耶さんは嵐ちゃんの学園での姿が見れて嬉しそう。ちなみに普段の嵐ちゃんはあんなに活き活きと人を投げ飛ばしたりはしてないよ。 「今年はレイラあまり面白いことしないわね」 「こっちは期待してるのよ」 「ちゃんとかっこいい姿見せてあげるから!」 カレンちゃんと華南ちゃんが言う面白い姿とは去年のお姫様抱っこやセーラー服のことだろうけど、今年はかっこいい姿を見せると決めている。むしろ去年も騎馬戦やリレーで俺活躍してたよね? 午後にはその騎馬戦もリレーも残っている。それともう一つ、女装レースも。 「お前ほんと女装好きだな」 「別に俺の趣味じゃないしー」 別に好きでやっている訳じゃない。ただ、需要があるのだから仕方ないじゃないか。みんな俺の美脚の虜なのだ。嬉しくはない。 「食欲あるならしっかり食っとけよ」 そう言い俺の皿に唐揚げが追加される。去年暑さにバテていたことを警戒してか、嵐ちゃんが水分補給や糖分補給をこまめに世話してくれる。それだけではなく30分おきに日焼け止めまで塗ってくれる至れり尽くせりな状態。そんな嵐ちゃんに甘えて互いの競技中以外はずっとべったり。らぶ。 「・・・二人がテントでもずっとイチャついてるから慣れてない一年が色気にやられてるんだけど」 「こっちのテントでも鷹がそれ見てギャーギャー騒いでるわ」 知らない所で被害を出しながらも体育祭を満喫中の俺はデザートの葡萄を頬張る。うまい。一粒摘んで横の嵐ちゃんの口に放り込むと、向いの席の十六弥くんも口を開けて待っている。そこに葡萄を二粒放り込んだ。ハムスターのように頬っぺたの膨らんだ姿が可愛い。 「我が家では普段のスキンシップがイチャついてるようなもんだもんな〜」 「確かに」 何の話かわからないけど、騎麻と真斗の口にも葡萄を放り込んであげた。おいしいね。 さあさあ、午後一番はみんなのお楽しみの女装レースからスタートだ。しょうがないから俺が完璧なる女装というものを披露してあげよう。

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