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俺の苦手なものを教えよう
『トップを独走していた常磐選手ですが、スカートが気になるのかペースダウンです!・・・おおっとぉー!?後ろから追い上げてくる選手がいます!!!』
アナウンスの声に後ろを振り向くと、同じレースに出ている鷹が不格好ながらも猛ダッシュで迫ってきていた。どうやらハイヒールで走るコツをつかんだらしい。
「え!?怖い怖い!!」
「レイラくぅーーーん!!!」
ただでさえ似合わないメイド姿で迫力があるのに、興奮して鼻息の荒い状態で突進してくる姿には恐怖すら感じる。つか、なんでゴールじゃなくて俺にむかって来てるんだ!!
必死で逃げるがすーすーする下半身が気になり足元をとられる。やばいやばいこぼれる!はみでる!
「追いつい・・・、ぅおっぁ!!!」
「っ!!」
俺が下半身に気を散らしている間に闘牛のように猛追してきた鷹がすぐ後ろに追いついていた。そして次の瞬間、盛大に転んだ。
しかも俺を巻き込んで。
つまづき豪快に転んだ際に、俺を巻き込み道連れにした鷹。ただでさえ俺よりも体重がある鷹に押しつぶされ、剥き出しの肘と膝に激痛が走った。そして更に大変なことになっているのが・・・
『なんということでしょう!!!豪快につまづき転んだ山野井選手に押しつぶされる形で転んだ常磐!!!・・・あろうことかみんなが待ち望んだラッキーすけべがここに!!!常磐選手の白桃のようなお尻が丸出しになっております!!!!ご馳走様ぁぁぁああぁぁぁああ!!!!!』
「っレイラ君ごめん!!!思いっきり潰しちゃった!!ってか、お尻ぃぃいーーーー!!!!」
ふざけたアナウンスや鷹の声が聞こえるけどそれどころじゃない。この際別に尻もどうでもいい。転んだ時に強打した痛みに動くことが出来ない。地面に擦れた手足が燃えるように痛い。ジンジンする。死ぬ。
地面に転がったまま動かない俺に先程まで盛り上がりに盛り上がっていたグラウンドの声も徐々に心配する声へと変わる。
「ぇ、ね、ねぇ、レイラ君、大丈夫?」
「・・・」
おどおどとしつつ鷹がそっとめくれたスカートを戻し尻を隠す。救護テントの方からドタバタと慌ててこちらに走ってくる保健医の天音ちゃん。嵐ちゃんや騎麻も近くにいるのか声が聞こえる。
「レイラ君、大丈夫?ちょっとだけ動かすよ?」
「痛くて動けないんだろうけど、ちょっと我慢しろよ」
「うわ、これは痛いな」
嵐ちゃんと騎麻によってゆっくりと起こされた俺の体は、想像通りというか、両手両膝を盛大に擦りむいて血が流れていた。それを視界に捉えてしまい更に患部が激しく痛み出す。痛みで硬直していた体に余計に力が入る。痛い痛い痛い。
ちなみに俺は血が苦手。捻挫や骨折よりも切り傷や擦り傷の方が更に無理。
「あ、こらレイラ泣くな泣くな!」
「大丈夫!痛くない!痛くないぞ!」
「ちょっと血が出てるだけだからね!?大丈夫だからね!?」
「・・・嘘、痛いもん、血、めっちゃ、出てるもん」
痛さと視界に入る流れる血でパニック。どばどばと涙が溢れ出る。
「こりゃまた盛大にやったな。水道はあっちだったか」
「ほらほら、こいつはどうにかするから競技に戻りな〜」
慌てる人集りの中に呑気な声が響く。周りであたふたする人を押しのけ現れた十六弥くんに問答無用で抱き上げられ、亜津弥くんと共に水道へと向かう。痛みで動けない俺はなされるがまま。
「ほれ、ちょっとしみるぞ」
「動けないうちに一気に洗っちまえ」
「い゛だぁい゛ぃぃいーーーー!!!!」
手足についた砂を水道でバシャバシャと洗われる。冷たいはずの水が傷口に当たって冷たいのか熱いのかわからない。遠慮のない洗い方に砂と一緒に血も流れ水が赤く染まる。
「も、もうちょっと優しく洗った方が・・・」
「無理無理、傷口にがっつり砂入ってるし」
「先生、今ならまだ動けないからちゃちゃっと消毒とかしちゃって。動き出したら暴れるから」
十六弥くんと亜津弥くんにがっちりと体を押さえられた状態で天音ちゃんに素早く手当てをされる。消毒液が触れるたびに更なる激痛がやってきて泣き叫び、手当てが終わる頃には息も絶え絶えの俺。
嵐ちゃんがとってきてくれた着替えにまた号泣しながら着替えさせられ、俺を抱えていた十六弥くんのTシャツは涙でびしょびしょ。
「次の出番までこいつ預かるわ。機嫌直してからそっちに戻すから安心しろ」
「・・・お願いします」
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