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精神年齢3ちゃい
『終了〜〜〜!!現時点で残ってる騎馬の数で赤組の勝利です!!!』
終了のアナウンスと共に赤組陣からの雄叫びがあがる。痛みを我慢しつつなんとか最後まで残ることが出来、得点に貢献することが出来た。
「レイラよくやった」
「よしよし、よく最後まで戦ったぞ」
「リレーまでテントで休もうな」
「・・・ん」
このくんのいちゃん嵐ちゃんの3人が代わる代わる頭を撫でて褒めてくれる。無理をして暴れたためジンジンする痛みが増して、むしろ感覚が鈍ってきた気がする。しかもまだ血が止まっていないのか手足を覆うガーゼが真っ赤に染まっていた。
テントに戻る前に一度救護テントでガーゼを変えてもらうことになり、嵐ちゃんにおんぶされたまま移動する。
「傷の範囲が広いからなぁ・・・血も止まってないしリレーは無理しない方がいいかもしれないよ?」
「・・・出るもん」
完全にはしょんぼりモードから抜け出せていない俺の最後の意地だ。最後まで競技には出たい。痛いし動きたくないし本当は今すぐ寮に帰ってふて寝したいが、楽しみにしていた体育祭をそんな終わり方をさせたくない。意地でも最後までやり切って、そこから全力でふて寝をする。
天音ちゃんにガーゼを取り替えてもらい、走っても剥がれないように包帯とサポーターで固定された。ガーゼを剥がした際に傷口が見えないように咄嗟に嵐ちゃんに目を隠される。でもチラッと見えた。グロテスクな傷口。泣きそ。
また嵐ちゃんにおんぶしてもらいテントに戻る。椅子に座り、目の前にはテントに戻る最中に貰った差し入れの山。お菓子やジュースに可愛い柄の絆創膏など様々だ。
「嵐ちゃん開けて」
「貸してみろ」
手のひらも傷だらけなためペットボトルの蓋を嵐ちゃんに開けてもらう。相変わらず日差しが暑いので冷えた炭酸がより美味しい。
「チョコ食べる?少し溶けてるかもしれないけど」
「レイラ君この絆創膏可愛いから貼ってあげるね。ほら、可愛くて元気でるでしょ」
「暑いから保冷剤使うか?」
周りで甲斐甲斐しく世話をしてくれる赤組のメンバー。響ちゃんが膝の擦り傷部分に可愛いパンダの絆創膏を貼ってくてた。可愛い。
「・・・ここは託児所か」
「みんな必死だね」
未だに涙目でちょっと唇を尖らせているレイラと周りに群がる保護者属性の人間達。思わず要からもれた言葉もあながち間違いではない。完全にこの空間は今、常磐レイラ専用託児所と化している。
今日の体育祭で学園内では文武両道、眉目秀麗、完全無敵という認識を持っていたレイラの存在が
“みんなの弟、中身はまだ3ちゃい”
というものに変わった。
最終競技のリレーを残すだけの状態での赤白双方の得点は白組が一歩リード。騎麻の指揮により前半の赤組リードをギリギリの所で追い越していた。
得点の大きなリレーで勝てばまだまだ逆転は可能。赤白それぞれ2チームのリレー選抜チームが編成されている。Aチームのアンカーはそれぞれの大将であるこのくんと騎麻がつとめる。そして赤組Bチームのアンカーは俺。得点は2位まで入るのでワンツーフィニッシュを狙っている。
「勝って逆転優勝するぞ」
『オオォォォォオォォォォ!!!』
このくんの言葉にみんなの声が重なる。これで勝負が決まる。去年は逃した優勝を、今年は絶対に掴み取りたい。
「レイラいけるか」
「もう大丈夫!」
どうにかリレーに間に合わせて気持ちを復活させることが出来た俺。相変わらず手足は激しく痛いが、これで最後!勝つしかない!!
「レイラなら大丈夫!」
「絶対勝てるよ!」
「レイラ君かっこいい!」
「期待してるぞ!」
「もっと言って!!」
みんなの応援に送り出されて気分を上げる。なんだかみんな俺の扱いが上手くなったな。でももっと褒めて。
さあさあ頑張ってカレンちゃんにかっこいいところを見せるぞ。十六弥くんにも褒めてもらうんだ。そして早く寮に戻って嵐ちゃんといっぱい寝る。
よしっ!頑張ろう!
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