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目指すは一位のみ
リレーの選手は体力測定の記録で選考したのち、更に実際のコースを走ってタイム測定をして決定した。260人中トップ16人で構成されたリレーのチーム。
各学年のEクラスは勿論、運動部を差し置いてレギュラー入りした生徒会メンバーと嵐ちゃんの身体能力を褒めて欲しい。勿論俺は16人中1位のタイムでメンバー入りした。
イケメンで可愛くて走るのも速い!俺最強!!
「リレーでは転ぶなよ」
「怖いこと言わないでよ!」
折角無理やり気持ちを盛り上げてたのに嵐ちゃんの言葉に鳥肌がたった。これ以上怪我が増えたら多分俺出血多量で死ぬと思う。
「・・・俺鎧でも着て走った方がいいかな?」
「それは走る以前の話になるんじゃないか?」
スタート位置にはすでに第1走者目の選手達が整列している。一人の走る距離は200m。全力疾走するには意外と長いその距離は元々体力のない俺の頑張れるギリギリの距離だろう。
「先に言っとくけど、ぶっちゃけ俺に期待しないで」
「「「えっ」」」
「だって手も足も痛いしこれでいつもどうりのスピードで走るとか無理。手足ちぎれる」
「「「・・・」」」
スタート前に俺と同じBチームに言った。本気で走るが、流石に今の状態で走れば多少なりスピードは落ちると思う。その少しの差がどう作用するかはわからない。
「でもビリからでも絶対1位とるから、みんなもそのつもりで全力で走って」
「「「!!」」」
「俺のお尻大画面で見たんだからちょっとくらい俺に楽させてよ?」
「「「はい!」」」
実は天羽学園の体育祭は、グラウンドが広いこともあり大型のモニターが用意されている。優秀すぎる放送部により活躍した選手や注目選手、ゴールの瞬間などは逃すことなくカメラに撮られる。そして悲しいことに女装リレーでの俺の醜態はばっちり大画面に映され、ドアップでみんなの目に焼き付いたようだ。
俺の桃尻を拝ませてやったんだから、そんな俺の為に死ぬ気で走るくらいしてくれてもいいよね?という意味を込めて笑顔を向ければ、元気な返事が返ってきた。
「ちなみにまだTバック履いたままだから1位とれればもう一回くらいお尻見せてもいいよ」
「「「おおぉ!!」」」
「阿呆か」
横で話を聞いていたAチームの嵐ちゃんからすかさずつっこみが入る。大丈夫だよ、嵐ちゃんにも見せてあげるから。
Aチームからも「お尻見せろー」という声があがったが嵐ちゃんが無言の圧力で黙らせていた。俺のお尻めっちゃ人気。
そんなやり取りで緊張感が程よく抜けた赤組はなかなかに絶好調。スタートのピストルと共に良いスタートダッシュを決めた。しかし白組も士気の高さは負けていない。余り差のない状態でバトンは第2走者へと渡った。
「いけいけー!!」
「白組頑張れーーー!!」
声をあげる俺の横から騎麻が白組の応援をする。白組のアンカーは騎麻とその横に晃太くんの姿があった。
「言っとくけど1.2位は両方赤がもらうから」
「俺達も負ける気ないよ?」
挑戦的な表情を向けてくる騎麻は勿論俺達と同じく優勝する気満々。どちらも譲る気は一切ない。
「このくん!一緒に騎麻と晃太くんぼこぼこにしようね!」
「そうだな、全力で潰そう」
「・・・二人とも言葉のチョイスおかしくない?」
そんな会話をしているうちにバトンは第6走者まで進んでいる。距離が進んでくるとどうしても差がひらき初め、順位は白A、赤B、赤A、白Bの順に。
「嵐ちゃん追いついてーーー!!!!」
赤Aの走者である嵐ちゃんはなかなか厳しい位置での走り初めだったが、身長を活かした長いストロークでどんどん先頭との距離を縮めていく。15m近く離れていた距離が殆どなくなった時点で次の走者へとバトンが渡った。
1位だった白Aの選手が第7走者へのバトンパスでもたつき、赤Bとの差が縮まり赤Aは嵐ちゃんの追い上げにより先頭との差は殆どない。白Bはその後少し間があけてからバトンが渡った。
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