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ドタバタのまま終わる体育祭

「逆転勝利のMVPのくせに閉会式サボって保健室かよ」 「ん゛ーーーっ!!」 「でもレイラかっこよかったわよ?泣いてばっかだったけど〜」 「んん〜〜っ!!」 本来なら閉会式をやっているはずの今、俺は保健室にいる。そこには十六弥くんとカレンちゃんもいて、目の前には消毒液と針を持った天音ちゃん。 「すみません、もう少ししっかり抑えておいて貰えますか」 「あぁ、おっけーおっけー」 「ん゛んっ!!」 後ろから十六弥くんに羽交い締めにされている俺。しかも喋れないように口をふさがれている。というのも、転んだ際の怪我で一番酷かった右膝の裂けていた傷がリレーの全力疾走により傷口が更に開いた。それはもう縫わなくてはいけない程に。そう、縫うのだ!!! 「ん゛ん!!ん゛ん゛〜〜〜っっ」 「大丈夫だよレイラ君。僕ちゃんと医師免許もあるし病院勤務の経験もあるから」 (やだやだやだやだやだやだ!!!) 首を左右に振って全力拒否するが俺に拒否権はない。十六弥くんの拘束は強過ぎて一切動かないし、笑いながら優しく言われても今の天音ちゃんは恐怖の大魔王にしか見えない。 もう俺の涙は全身の水分を出し尽くす勢いで流れている。ああもう死ぬ。傷が塞がらないで出血死してもいいから刺さないで!! 「もう、仕方ないわね」 「!?」 急に目の前が真っ暗になった。それと同時に顔面を覆う柔らかい感触。 「これで見えないから怖くないでしょ?」 この感触を俺はよく知っている。このなんとも言えない柔らかさと、鼻いっぱいに香る甘く優しい香り・・・!これは、カレンちゃんのおっぱい!!!! 確かにカレンちゃんのおっぱいに包まれていれば怖くないかもしれない。あ、でもTシャツの上からじゃなくて、どうせなら直接がいいな・・・ プスッ 「ん゛ん゛ん゛〜〜〜っ!!!!」 (やっぱり痛いぃぃい!!!!!!) 「一応防水フィルム貼ってるけど出来るだけ濡らさないようにね。他の傷口も何日間かは腫れるだろうけど触ったりしちゃダメだよ」 「・・・はぃ」 泣き過ぎて最早放心状態の俺は迎えに来た嵐ちゃんと一緒に保健室を出る。あの後結局五針も縫われた。あの皮膚を貫通する針と糸の感覚が未だに残っている。 「じゃあ俺達そろそろ帰るぞ」 「・・・うん」 体育祭も終わってしまったので十六弥くん達は帰ってしまう。今日赤組こそ優勝はしたが、折角来てくれた二人に俺は情けない姿ばかり見せてしまった・・・。そう思うと先程までの痛みで溢れていた涙とは別の涙が目から再び溢れてくる。 「なぁ〜にまた泣いてるんだよ。干からびてミイラにでもなるつもりか?」 「・・・だって、」 情けなさでつい俯き気味になる顔を十六弥くんの大きな手に挟まれ、グイッと上を向かされる。そこには、呆れたような、仕方ないな、といったような表情の十六弥くんとカレンちゃんの姿が。 「何を泣いてるのかは知らないけど、俺達 今日のお前に大満足だぞ?」 「楽しい体育祭だったわね」 「でも・・・」 俺の言葉を遮るように開こうとした口を十六弥くんの指が塞ぐ。 「今日の体育祭の新しい種目やルールにはお前が殆ど関わっているって聞いたぞ?それに今年は俺達も参加出来て去年より更に面白かった」 「それに怪我をしてもしっかり最後まで参加したじゃない?なのに泣くようなことがあるの?」 「・・・」 優しく笑いながらこちらを見つめる十六弥くんとカレンちゃんにさらに涙が溢れる。 「俺達親は別に子供の良いとこだけを見るために来てるわけじゃないんだぞ?子供が一生懸命に何かをやろうとする姿を見れれば、ぶっちゃけ結果なんかどうでもいい」 「まあ、勿論勝てれば嬉しいし、負けたら悔しいけどね」 「今日はお前の計画した楽しい体育祭に参加も出来て、頑張る姿も見れた。おまけに優勝もしたんだ、満足でしかないだろ」 「女装姿も可愛かったし、リレーもかっこよかったわよ?」 二人の言葉に思わず怪我の痛さも忘れて二人に抱き着く。やっぱり俺のパパママは最高。なんだか今の言葉で今日の体育祭にさっき思ったような悔しさが一気に吹き飛んだ。 「立派な姿も見れたが相変わらずの泣き虫な姿も見れてほっとしたわ」 「子供の成長は嬉しいけど、いつまでも小さい時のままでいてほしいって気持ちもあるのよね」 今日の体育祭は最高の思い出だ。

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