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体育祭のその後

嵐ちゃんとそのあとは直接寮に戻った。今回ばかりはあと片付けは免除だ。 「しったりあげとけよ」 「し゛み゛る゛〜〜〜っ」 まずは全身についた砂埃を落としたかったため、嵐ちゃんと共に風呂場へ。濡らさないように上に手や足をあげてどうにか嵐ちゃんに全身を洗ってもらう。防水フィルムや特大サイズのキズパワー●ッドにより大きな傷口は水を弾いているが、周りのむき出しの擦り傷はお湯ですらめちゃくちゃしみる。 患部に貼られたそれらのおかげか痛みが少しづつだがやわらいできた。鎮痛剤成分でも練り込んであるのだろうか。有難い。 「・・・嵐ちゃん今日の体育祭楽しかった?」 ソファーに座る嵐ちゃんのお腹に顔をうずめた状態で問いかける。夏祭りの時に嵐ちゃんの最後の高校での体育祭を、最高の思い出にしてやるなんて大口を叩いたのは俺自身。十六弥くん達はああ言ってくれたが、それは親という目線の話だ。 ・・・嵐ちゃんは今日楽しかったのだろうか。 「今までやったどの体育祭よりも記憶に残る体育祭だったな」 「・・・」 「レイラが学園に来て初めて同じチームとして戦ったからな。練習期間からずっと楽しかったさ。あ、でもあんまみんなの前で泣くのはなしな。お前泣き顔のくせに可愛すぎるからみんなには見せるのは勿体ない」 そう言い優しく大きな手で頭を撫でられる。少し頭をずらして嵐ちゃんの顔を見上げた。こちらを見下ろすアンバーの瞳は今日も優しい色をしている。 「嵐ちゃん大好き」 「知ってる」 「・・・俺も今日楽しかった」 そりゃよかった。そう言ってくくくと笑う嵐ちゃんの笑い声につられて俺も笑顔になる。俺がみんなに最高の思い出をつくってあげるつもりだったが、むしろ俺の方がみんなから最高の思い出をつくってもらったようだ。 色々ハプニングはあったけど、きっと今日はこれからの人生でも何度も思い出すことになる最高の思い目の一つになると思う。 「それにしても豪快に転けたな」 「傷残ったら仕事で怒られるなぁ・・・」 ちゃんと処置していれば傷は残らないと天音ちゃんが言っていたけど、大丈夫だろうか。そんな露出するような撮影はしていないが、傷は残らないにこしたことはない。 その日は疲れていた事もあってすぐに眠りについた。夜中に何度か寝返りを打った時に痛みで飛び起きたが、それでも眠気には勝てなかった。寝る前に額に貼られた冷えピタのおかげかいつものような熱もあまり出ずにすんだ。よかったよかった。 その後、時間はかかったがどうにか綺麗に傷跡も残らずに完治した。そして体育祭でメンタルが幼児だと全校生徒に知れ渡ったため、生徒のレイラへの扱いが大きく変わり、学園が大きな保育園のようになったとかならなかったとか。それに開き直ったレイラが、何か問題が起きそうになるたびに、 「泣くぞ」 というパワーワードを使うようになったとかならなかったとか。 様々な噂が学園に広まる中、間違いのない真実があるとすれば、今年の体育祭での写真部での写真販売の売上のトップがレイラの “桃尻” 写真であるということだろう。 「お前・・・あんま人前で尻出すのやめろよ」 「そんな変態みたいに言わないでよ」 嵐ちゃんに叱るようにやたらと尻を出すなと言われたことに、俺は納得していない。俺がいつ自ら進んでそんな露出狂になったというんだ。結局リレーの後だってすぐに保健室に連行されたからみんなに俺の桃尻は見せていない。いや、見せたかったわけではないんだけど。 ちなみにあの後しばらくの間、鷹の様子がおかしかった。いつもなら俺を見つける度にタックルをする勢いで抱きついてきていたのに、距離をあけて恐る恐るといったように近づいてくる。体育祭でのことを気にしているのはわかるが、いつもと違う態度が気持ち悪かったので一度俺から思いっきり抱きついてやった。すると次の日からは前のようにウザいぐらい絡んでくるようになったが・・・。その方が鷹らしくて落ち着く。 「レイラ君〜!もう怪我大丈夫?痛くない?不便な事とかあったら俺なんでもするよ?あ、もし溜まってたら俺が代わりにヌいてあげるけど・・・・・・」 「間に合ってるから!!」 もうちょっとの間、落ち込んでいてくれた方が良かったかもしれない。

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