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とある休日
「・・・なにその格好」
「嵐ちゃんも行く?」
ジャージの上下に手には軍手、足元は長靴。頭にはタオルを巻いた状態の俺を見て嵐ちゃんが不思議そうな顔をしている。
暑かった夏も過ぎ去り徐々に肌寒い季節がやってきた。そろそろ寝る時も服を着た方がいいかなぁと思いつつ嵐ちゃんと密着して寝たいからまだ我慢。
「今日は芋掘りだよ」
「芋堀り?」
今日は土曜日で学園は休み。いつもならだらだらとしている午前中に何故俺がこんな格好をしているのか。それは今から芋掘りをするからだ。
というのも、昨日ーー、
「レイラ君は焼き芋とスイートポテトならどっちが好き?」
「ん〜俺、焼き芋は食べたことないかも。なんで?」
「実は、そろそろ収穫出来そうなんだ」
「?」
生徒会で仕事の合間にみんなでお茶をしていた時。急に響ちゃんにそんな話題を振られた。スイートポテトはたまに家でもおやつとして出されていたので好きだ。甘くて美味しい。
「ああ、俺学園の敷地の一部を借りて菜園をしてるんだよ」
「へぇ〜!知らなかった!」
温室の植物の世話をしているのは知っていたが、まさか野菜まで育てているとは知らなかった。でも、そういえば響ちゃんは野菜好きだ。食堂でもいつも野菜がメインの食事ばかりしている。
「育てた野菜は料理部がいつも使ってくれてるんだよ」
天羽学園は男子校だが料理部というものがある。しかも講師として食堂の料理人が料理を教えているのだ。元々TOKIWAのホテルの料理人を経験しているレベルの高い料理人達が直々に料理を教えて貰えるという事で、将来料理人を目指すような生徒が料理部には所属している。
「で、収穫に誘われたってわけか」
「そういうこと〜。あ、響ちゃん!」
暇だからと嵐ちゃんも一緒に響ちゃんのいる菜園へとやってきた。校舎の裏手にあり森との間。綺麗に耕された畑はテニスコートくらいのサイズがあった。予想より広くしっかりとした畑に驚いた。学園にこんな場所があったとは。
「レイラ君、嵐太郎も来たんだね!」
「響ちゃん!思ってたより広い畑でびっくりなんだけど!」
元々は何年も前の卒業生がここで野菜を育て始めたのが始まりらしい。金持ちの集まる学園で畑仕事をしたことがある人間なんて殆どいない。だからこそ、興味があり学園長の許可を貰いここに畑をつくったんだとか。その生徒が卒業してからも興味のある生徒により畑は受け継がれ、今は響ちゃんや料理部の人達が世話をしているらしい。
「美味しい料理をつくるにはまず食材のことを理解しとかないとってことで代々料理部が世話をしてるんだって。俺は単純に興味で手伝ってるんだけどね」
そういう響ちゃんは手際よく畑の手入れをしていく。ジャージ姿も爽やかでかっこいい。
「この蔓の下にさつまいもが埋まっているからね。どんどん掘り起こして収穫しちゃおうか」
「はーい!」
指示されるがままに蔓のしたをスコップで掘り起こしていく。嵐ちゃんと並んで土を掘っているとすぐに紫色のさつまいもが顔を出した。俺も嵐ちゃんも芋掘りは勿論畑仕事の経験はない。なので、その出てきたさつまいもにやたらとテンションが上がった。
「すご!こんなに大きいよ!」
「こっちにもあるぞ」
「ふふふ」
俺達の姿を見て響ちゃんはにこにこと笑っている。すごいなぁ。このさつまいもを響ちゃんが育てたなんて。さつまいもだけじゃない。畑には他にも色々な種類の野菜が育てられている。
当たり前だけど、普段俺達が食べているものも、誰かが世話をし育ててくれたものだ。きっと俺が知らないような手間もいっぱいあるのだろう。
(そう思うと野菜が嫌いとか、好き嫌いしてたらダメだなぁ・・・)
心の中でこれからは頑張って野菜をちょっとづつでも食べようと思った。ちょっとづつ。
「あ、ミミズ」
「!!!助けて!!!」
「・・・そういやレイラ君虫苦手だっけ」
畑仕事はあまり俺には向いてないかもしれない。
その後は収穫したさつまいもで料理部がスイートポテトと焼き芋を作ってくれ、それをみんなで食べた。たまにはこういう休日もいいなぁ。
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