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それぞれの道

「ネットですごい話題になってるな」 嵐ちゃんがiPhoneであるネット記事を見つけた。それはここ最近、少し話題になっている記事。 “突如現れた銀白色の天使!突如大手ファッション誌の表紙を飾る” 「なんか好き勝手書かれてるよね」 ゴールデンウィークにモデルとしてデビューする夢を叶えた俺は、夏休みにいくつか撮影の仕事をもらった。T.KRNのカタログでも遂に顔出しをし、雑誌の撮影をした結果、その写真を見たらしい大手の世界的ファッション誌から声がかかったのだ。しかも初にして表紙に抜擢され、発売と同時にネットでも話題となった。 「“中性的な顔と神秘的な見た目”、“年齢不詳、性別不詳、国籍不詳”、“長年顔を隠し続けていたT.KRNの専属モデルが遂にその顔を解禁”、“溢れる色気の中に見え隠れする愛らしさ”・・・性別は流石にわかるでしょ」 「まあこの前の衣装とか、体のシルエットとか出ないやつだったし、髪も長いから分かりづらいかもな」 確かにこの前の撮影ではまだ怪我が治っていなかったので、それがわからないようにダボッとしたシルエットのものが多かった。髪も肩に付くくらいまで伸びている。それでも流石に女の子には見えないと思うんだけどな。 それにしても嬉しいことにデビューと同時に予想を超える注目を集めた。そのおかげで仕事の依頼もかなり沢山来ているらしい。ただ、今の俺は学業優先。出来る仕事の数は限られている。 「注目されている間に何か実績残せると良いんだけど」 「既に十分過ぎる実績だろ。人気ブランドのモデルに雑誌の表紙って」 「まぁそうなんだけど」 俺の夢はモデルだけど、モデルになって終わりという訳では無い。モデルになって沢山の雑誌に出てショーに出て、そんな俺を見た人の心を動かせるような存在になる。 「ま、まだスタートしたばっかりだもんね。焦っても仕方ないや」 まだ今はスタートラインに立っただけ。まだまだ先は長いんだから、今から気を張りすぎたら途中で疲れてしまう。今は、今の自分に出来ることを本気で頑張っていこうと思う。 「俺も頑張らないとな」 そういう嵐ちゃんは最近寮でもよく勉強をしている。というのも、嵐ちゃんは卒業後天羽の付属大学では無い大学を目指している。そこはかなりの超難関大学のようでレベルの高い天羽学園のSクラス所属だからと言って、気は抜けないらしい。何故か俺にはどこの大学か教えてくれないので、真相はわからないけど。 ・・・多分嵐ちゃんは大学だけではなく、もっと先のことも考えている。でも、受験が終わってもいない今はその先のことは教えてくれない。嵐ちゃんが何を考えているのか気になりはするが、今は静かにただ応援している。どんな内容でも、俺達にとって悪い方向には行かないだろう。俺は嵐ちゃんを信じている。 嵐ちゃんだけでなく最近では三年生はの雰囲気が変わった。学園の付属大学に進学に行くにも試験はある。嵐ちゃんのように他の大学を目指す人だってたくさんいる。みんな今後の自分の為に、今が追い込み時なのだろう。 生徒会も先月の体育祭を最後に三年生は引退してしまった。つまり俺は予定通り生徒会長というポジションに就いている。来月には文化祭もあるのでやることは山積み。 少しづつ変わる生活は楽しい未来のための準備段階。そう思って毎日を過ごしている。 「文化祭成功するといいな〜」 「俺達も文化祭は息抜きにもなるし楽しみにしてるからな。きっと成功するさ」 騎麻達のいない初めてのイベント。まあ、俺以外のみんなは経験者だから大丈夫。みんな優秀だからな〜。俺、ぶっちゃけ生徒会長っていう席にいるだけ。みんなが手際良く進めてくれているからもしかしたら一番暇かもしれない。 ま、そんな呑気なことを言っていられるのも今だけかな。明日からはまた、文化祭へ向けて生徒会は動き出す。流石に俺もまったりしているわけにはいかないだろう。 「今年はクラスの出し物何だろうねぇ〜」 「あまり面倒なのじゃなきゃいいけど、今年は生徒会引退した騎麻達が張り切りそうだからな・・・」 今まで生徒会の仕事があって、あまりメインでクラスの作業に関われていなかった騎麻が張り切る姿は簡単に想像出来る。嵐ちゃんは出来るだけメインじゃない役割がいいみたいだけど、騎麻達といる限り巻き込まれるんだろうなぁ。楽しみ。

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