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ルールは破るためにある
放課後はどのクラスも文化祭の準備が行われている。いつもと違う様子にみんなの気持ちが浮き足立っているのが見ていてもわかる。
「レイラ先輩!うちのクラス喫茶店するんで来てください!」
「俺らもミニゲームするんで是非!」
「レイちゃーん俺らのとこも来てよー!」
廊下を歩いているだけで色々なクラスからの声がかかる。出来たばかりのチラシを渡してくる者も多く、かなりの枚数が集まった。
各クラスの進み具合を覗きつつ、コミュニケーションを取っていく。一緒に見回りをしている真斗ももれなく一緒に生徒に絡まれる。
「真斗君もサービスするからうちのクラス遊びに来てね」
「考えとく」
真斗に声をかける人数も多い。クールな真斗だけど、声をかけられるとちゃんと一人一人にしっかりと返事をしている。真斗はクールで冷たく見られがちだけどとても優しいからね。騎麻とは違う魅力がある。
最後に三年生の教室を回っていると調度廊下に出てきた嵐ちゃん達に遭遇した。
「生徒会長なのに暇なのか?」
「嵐ちゃんひどい。みんなが優秀だから俺はやること少ないのは本当だけど」
両手にいっぱいにチラシや試作品の料理を持った俺と真斗を見て呆れた顔をされる。別に遊んできたわけじゃない。自分の分の仕事も終わらせてから見回りをしているので、サボりでもないぞ。
「レイラはやたら仕事が早いんだよ。会長の仕事が少ないはずないだろ」
「そう?」
真斗にそう言われるがあまり俺にその自覚はない。まあ、真斗がそう言ってくれるならそれを信じておこう。仕事が早いと褒められて悪い気はしない。
嵐ちゃん達のクラスはステージを企画していて、体育館を使ってファッションショーを行う。元々学園の人気者が集まっていたこともあり、他クラスからの希望もあったとか。簡単に言えば人気者達のかっこいい姿を、最後の文化祭で目に焼き付けたいといったとこ。
「嵐ちゃんのランウェイ楽しみ」
「・・・プロに見せるような出来じゃないぞ」
勿論嵐ちゃんもモデル役。大丈夫、嵐ちゃんは立ってるだけでかっこいいから。実家がアパレル業界のまみちゃんが衣装を、のいちゃんが映像関係を取り仕切っているらしく、なかなか本格的になることが予想されている。騎麻もステージの設営やデザインを考えたりと楽しそうに動き回っていた。
みんな当日はモデル役なのでウォーキングやポーズの練習などもしていて、何度か俺も先生として手伝いをした。
「ショーの時間は写真部も気合い入れて参戦するって」
「・・・あいつら撮った写真で商売する気だろ」
写真部は写真の販売をしている。その売上で新しいカメラやレンズを買っているらしい。なかなか良いカメラを使っていることを考えると、写真の売れ行きはかなり良いようだ。
その後は嵐ちゃんと分かれ生徒会室に戻る。どのクラスも準備は順調そうだった。あとは俺達生徒会も問題が無ければサポートに回るのみ。
「ただいま〜」
「あ!レイラ君丁度いい!ちょっと聞いて下さいよ〜!」
「?」
生徒会室の扉を開けると元気に飛びかかってきた鷹。そしてその向こう側ではケイと渚くんが何だか困った顔をしている。なんだなんだ?状況は分からないけど、とりあえず鷹の頭にチョップを落とす。ケイ達困らせたらダメでしょ。
「レイラ君も生徒会で何か出し物したいですよね!?」
「生徒会で?」
「だから!もう出し物の申請終わってるでしょ!俺達が申請期間無視しちゃ駄目!」
「だってこんなにスムーズに仕事終わって余裕出来ると思わなかったんですよぉ〜っ」
なんだなんだ?話の流れからすると、思いの外生徒会の仕事が早く終わった分の余裕を生徒会での出し物に使いたい鷹。そして生徒会として申請期間を過ぎての出し物の追加に異議ありのケイ。二人のやり取りを見て困ってる渚くん。ってのが今の状況のようだ。
「え、出し物いいじゃん楽しそう」
「レイラ君!?」
「ですよね!やっぱレイラ君話がわかるな〜!」
別に申請期間くらい無視してもいいでしょ。クラスや部活の申請は問題なく終わったし、余裕もある。パンフレットの組み換えは必要だけど、そんなのすぐに終わる。
「それに生徒会が何かやるってなったらみんな喜ぶんじゃない?」
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