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ホストクラブとは、、
「なぁ、ここ入ってみないか?」
ガラッ
『ようこそ、ホストクラブ “Roi de jour” へ!』
真っ赤な絨毯に少し暗めの照明。壁に貼られた写真と壁際に控えたボーイ達。部屋には9つの高級そうなソファーが並べられている。そう、扉を開くとそこはホストクラブでした。
「いらっしゃいませ。こちら “Roi de jour“ の選りすぐりのホスト達となります。ご指名はありますか?」
入口に待機していた迅が素早く俺達の顔写真とキャッチコピーの書かれたメニュー表を見せる。みんな事前に用意したスーツとしっかりとセットされたヘアスタイルは、普段との雰囲気が大分違って見える。
「じゃ、じゃあ、“お兄ちゃん、って呼んでもいい?” のケイ君を・・・」
ケイを選んだ二人組は中央のソファーへと案内される。その二人の元へスーツ・・・というよりお金持ちのお坊ちゃん風の膝丈のパンツにサスペンダーを着用したケイが向かう。ケイの可愛さを全面に出すように髪の毛もふわふわに、ほんのり頬をチークで赤くするという演出付き。
「“お兄ちゃん”、ボクに会いに来てくれたの?」
「「は、はい!!」」
「ありがとうっ」
無邪気な笑顔で二人の真ん中に座るケイ。完璧だ。テーブルの上のメニュー表をとり、何にする?と小首を傾げれば赤い顔で二人は自分達のドリンクとサンドイッチを注文する。
・・・本当はケイは長男だし人に甘えるよりも、むしろ世話焼きタイプ。真逆に近い弟キャラを完璧に演じているのは迅の特訓の成果だ。
「よしよし、みんなしっかりと演じているな」
不気味に笑う迅の様子に練習期間に猛特訓を受けた他のホスト達の顔が引きつっている。ちなみに一番熱く迅の指導を受けていたのは要。
「最近、あんま部活で活躍出来てなくて・・・」
「練習をサボっているわけじゃないんだろ?」
「むしろ、どうにかしたくて自主練とか増やしてて・・・」
要にドリンクを作られながら悩み相談をしているらしい客。接客中だと思えない愛想のないその姿に笑いそうになる。まあ、要は普段からにこにこしてるタイプではないけど。
でも、これも迅の作戦のうち。
「なら今はチャージ期間なんだな。沢山練習して、沢山吸収する時なんだろう。それが発揮される時が楽しみじゃねぇか」
「カナメ君・・・」
「負けるなよ」
出来上がったドリンクと一緒に小さく口角を上げる。ずっと無表情だった状態からの急な笑顔。グラスを受け取った客はヤンキー的見た目の要からの優しさに、若干涙目だ。そして受け取ったドリンクをグイッと一気に飲み干したと思うと要に向き直り、
「俺、俺頑張るよ!!少しでも力をつけて、きっと活躍してみせる!!」
「おう、頑張れ。おかわりいるか?」
「お願いします!」
先程までのしょんぼりモードから一転、やる気に満ち溢れた様子の客に作ったばかりのドリンクを再度作り始める。
・・・なんというか、自然な流れで追加注文とってるなぁ〜。
ちなみに要は “話、聞いてやろうか?” をキャッチコピーに、無愛想だけど実は優しい一匹狼という設定。別に要は元々無愛想でもないし、一匹狼でもないんだけど知らない人に愛想を振り向くタイプではない。しかし、このキャラ設定なら基本的に自分から色々話す必要はない。
なんというか、迅の配役は抜群ということだ。
「ほらほら、レイラもしっかり稼いでこい」
「は〜い」
俺もみんなに負けないように稼いできますか〜。と言っても、勝手にNo.1のところに名前をかかれたLaylaくんは新規の指名を取っていないから朝一は暇なのだ。みんな俺に会うために二回目の御来店お待ちしてます。ちなみにキャッチコピーは “現世に舞い降りた天使”。・・・あ〜痛い痛い。
午前中は適当に色んな客の所にふらっとヘルプに入るだけ。みんなが俺にドリンクを入れてくれるおかげでお腹たぽたぽ。
「レ、レイラ君!よかったら何か飲む!?」
「・・・わ〜い」
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