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No.1フードファイターレイラです
一つの席への滞在時間は5分程。時間が経てば、また次の席へと移る。
「じゃあ、楽しんでね」
そう言うと名残惜しそうにする客に笑顔を振り撒きつつ次に行く席へと視線を移す。次は俺とペアのゆっきーが担当している席だ。どうやらゆっきーの周りにいる客には見覚えがある。バスケ部の三年生だ。
「俺も混ざっていーい?」
「お!ついにレイラちゃんのお出ましか!」
「レイラ君俺の膝の上おいで〜!」
「あ!ずるいぞ!こっちも空いてるよ〜!」
残念ながらそんなサービスはやっていない。バスケ部にはたまに運動をするために練習に混ぜてもらっているのでみんな顔見知り。もう三年生は引退しているので何だか久しぶりの顔ぶれだ。
とりあえず二人並んで座っていた先輩の間に割り込んで座る。やたらと密着して座ってくるが、まあ顔見知りだから多少は多目にみてあげよう。でもお尻を触る手は払い落とす。お触り禁止。
「レイラちゃん何か飲む!?」
「お腹たぷたぷだから食べ物がいいな〜」
「おっけー!」
ちょっと小腹が空いてきた。そう言えばフルーツの盛り合わせや唐揚げ、サンドイッチなどを追加注文してくれた先輩達。仕事中に好きに飲み食い出来るってなかなか最高だよね。しかも俺が食べたものも店の売上になるし。
「レイラ君、はい、あ〜ん」
「あ〜」
出てきた料理の中からパイナップルを一切れフォークで刺し、差し出されるがままに口を開ける。大きめにカットされたそれはなかなかの食べ応えで、溢れた果汁が口の端から零れる。
「あ!レイちゃんストップストップ!垂れたらスーツ汚れちゃうからね。・・・はーいよしよし、綺麗になったよ。先輩、レイちゃん口小さいからもっと小さいのあげてくださいよ〜」
慌てたゆっきーにテキパキと口をふきんで拭かれ、食べさせた先輩に注意をする。うんうん、俺のスーツ白だからね。汚れたら目立つしダサいよね。・・・でも首にふきんを巻くのはやめて欲しい。なんというか、完全に赤ちゃんのヨダレ掛けにしか見えない。
その後も唐揚げはフーフーしてからあげてください、お腹が冷えるので飲み物はホットで、など俺の世話を焼きまくるゆっきー。
・・・あれ?俺のキャラ設定って “甘えん坊の末っ子“ だよね?なんか末っ子は末っ子でも赤ちゃん扱いされてない?そしてゆっきーはお兄ちゃんというよりお母さん?
疑問に思いつつも先輩がフーフーした唐揚げを頬張る。適温です。
「レイラ、全然もてなしてなくない?」
「むしろもてなされてるな」
昼頃、休憩時間らしい騎麻と嵐ちゃんがやってきた。次々にやってくる客からドリンクやフードを与えられ続けている俺に呆れた顔だ。
「これが仕事だし」
「朝からずっと飲み食いしっぱなしかよ」
少量づつとは言え確かに朝からずっと飲み食いをし続けていて腹は満腹状態。水分の摂りすぎで何度かトイレにも駆け込んだ。あ、嘘嘘。俺天使だからトイレとか行かないし。
「二人にはサービス。Laylaくんのお持ち帰りの権利を贈呈します」
「普通に休憩時間なだけだろ」
「さっさと着替えておいで」
そう、この二人で前半の担当はラスト。一緒に校内を回る約束をしていたのだ。休憩時間になると同時に席を立ち更衣室になっている部屋に向かう。他の席や並んでいる生徒達から残念そうな声が上がったが、ごめんね。Laylaくんは天使から人間に戻ります。
後半もあるので髪の毛はそのまま制服に着替える。教室にいる間スーツでキッチリしているので、今日はブレザーは無しで上はパーカーにした。オンオフ大切。
「おまたせ〜」
廊下で待っていた嵐ちゃんと騎麻の周りにはちょっとした人集りが出来ていた。学園祭でテンションの上がっている分いつもより積極的になっているのか、我先にと言った感じに話しかけている。
その後、結局俺も捕まり少しの間更衣室前が大渋滞になったが、どうにか抜け出し校内を周り始める。3-Sは午後のショーの時間まではほとんど自由時間らしく騎麻は元生徒会長として全出し物の制覇を目指しているらしい。俺も最後の生徒会からの特別賞の発表もあるので同じく全てを回るつもりだ。
「一年は食べ物系が多いね」
「お腹いっぱいだから二人がいてよかった〜」
「お前は食べ過ぎだろ」
食べ物関係はクラスだけではなく、部活での出店を出しているところも多いので流石に全てを食べて回るのはきつい。しかも出店なら買って後から食べることも出来るが、教室でのカフェとなるとその場で食べなくてはいけない。
しかも・・・
「会長ー!!これおまけです!!」
「先輩達なんでサービスです!」
「これ自信作なんで!」
と、次から次へと頼んだもの以上のものがサービスとして渡される。それは騎麻や嵐ちゃんも同じで、結果としてもの凄い量になっている。・・・後で生徒会役員で分けよう。
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