303 / 311

ついにここまでやってきた

ハワイでの家族旅行はひたすらアクティビティの詰め込みとショッピングと宴会。いつでもどこでも体力の有り余っている和紗と愛紗は来た時の3倍は日焼けでこんがりとしている。毎日はしゃいでいても疲れが溜まることがないのか日に日にパワフルになっている気がする。 「あらあら!またみんな一段と大きくなって!」 滞在4日目に合流した鴻來くんとリディアちゃん。相変わらず世界中を旅して暮らしている二人はハワイに来るまではインドにいたらしい。ナマステ〜。 そしてリディアちゃんの言うとおり、前回会ってから数ヶ月でまた成長した身長。中でも成長期真っ只中なのか夏休みぶりの再会だというのに、成長が目に見えてわかる和紗は既に170cm台の後半に足を踏み入れている。恐ろしい。 「おいレイラ、お前誰に許可とってそんなに成長してんだよ」 「でかくなったでしょ〜!鴻來くんともう身長変わらないよね・・・って、いだぁぁぁっ!!」 4月に会った時はまだ少し上にあった鴻來くんの視線がなんと今では同じ位置に!麻紀くんの身長は夏の時点で追い付き、とうとう常磐家の鴻來くんの身長にまで追いついた!! その事が素直に嬉しかったのだが、鴻來くん的にはショックな出来事だったらしい。喜ぶ俺に向かってアイアンクローをかましてきた。 その勢いのまま近くにいたカエラとサハラと騎麻の頭へと順番にチョップを落としていく。え、なに、物理的に縮めようとしてるの? 「でもこのままだと俺十六弥くんに身長追いついちゃうかも!?」 「無理無理」 俺の淡い期待に間髪入れずに否定してくる十六弥くん。全然無理じゃないよね?十六弥くんは確か19・・・2cm?だからあと4cmの差しかない。全く不可能って程の差じゃないよね?むしろもうゴールは目の前的な? 「お前らが俺の身長を抜ける日は来ない。何故ならお前らの成長期は今が最終形だからだ!!」 「えぇーーーっ!!」 自信満々に言い切った。お前らってことはカエラもサハラもということか。ちなみに二人は今189cm。俺との差はなんと1cm。最早これは誤差でしかないよね。 なんの根拠もないのに十六弥くんに言いきられると、本当にそうなのかもしれないと思えてくる。そして、心のどこかで十六弥くんより大きくなる自分の姿が想像出来ないのも確か。むしろここまで成長しただけで十分なんだけど。 みんなで楽しく過ごしてるうちにあっという間に年が明け、新しい一年が始まった。去年は嵐ちゃんも一緒に迎えた年越しも、今年は時差もあった。毎日まめに連絡は取っているが、やっぱり顔が見れないのは寂しい。早く日本に戻って嵐ちゃんに会いたいな〜なんて思いつつ家族との時間も楽しむ。 きっと嵐ちゃんは今も目指す大学に向けて勉強をしているのだろう。・・・そういえば俺はまだ嵐ちゃんが行きたい大学が何処なのか教えて貰っていないな。気にはなるけど、結果がわかれば嵐ちゃんが教えてくれるはず。それまで気長に待とう。 「騎麻も柚乃も受験勉強余裕なんだね」 「俺は推薦で合格貰ってるからな」 「私も合格には問題ないかしら。どっちにしろ学校が始まる時期もまだ先だし」 そういえば日本と海外では学校のスタート時期にだいぶズレがあるんだった。元々俺が飛び級で大学の勉強をしていた時は通信教育だったし、キャンパスに通っていた訳では無いからあまりシーズンなど気にしたことがなかった。なんというか、勉強だけ出来ても知らないことがたくさんある。まあ、それもこれからの人生で知っていけばいいのだけど。 とりあえずの俺の休み明けの課題は “一人で寝ること” だ。嵐ちゃんと話して冬休みが明けたら一人で寝る練習をすることになっている。嵐ちゃんが卒業してしまったら困ることのNo.1に位置する問題。いや、会えなくて寂しいとかそういう問題もあるけど、それはメールなりテレビ電話なり対策はある。しかし寝れないとなると、それは最早死活問題。 元々はカエラとサハラと一緒に寝ていた期間が長いとはいえ、大きくなって部屋を分けられてからは一人で寝ていた。そりゃたまに誰かの部屋に集まって一緒に寝たりもしてたけど、別に一人で寝れないということは無かったんだ。 きっかけは入学してすぐの保健室での事件のトラウマではあったとはいえ、そろそろなんとかしなくてはいけない。

ともだちにシェアしよう!