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第4話 京都弁の女

俺は体調不良で休んでいる事になっていたらしい。 職員室に戻ると和服の女性が俺を待ってた。 女性は立ち上がると俺に頭を下げて近寄る。 「はじめまして。  うち、長谷部 京極と申します。」 京都弁だろうか。 それにしても、女性なのに京極とはとても珍しい名前だ。 「あ・・・はい・・・はじめまして。  天野 天魔と言います。  俺に何かごようでしょうか?」 誰かの保護者だろうか。 俺が請け負っているクラスには長谷部と言う名前は居ない。 女性は俺の手を握り俺をじっと見つめる。 「うち、天魔はんに一目惚れしたんどす。  それに、なんや・・・とても、ええ匂いしはるし。」 「え、この香水って・・・男にしか・・・。」 「うちは男どす。」 今、彼女はなんと言ったんだ。 職員室の客間の様な所で話している為に彼女の突然のカミングアウトは誰にも聞かれなかったので良かった。 「うち、この学校に転入する事にしたんどす。」 「えっ・・・でも、此処は男子校だから・・・そのままじゃ・・・。」 「それは、ごあんしん下さい。  うち、今は女やけど体は男やさかいに通えます。」 「は・・・はぁ。」 「うちは天魔はんの事が好きで好きで堪らんのどす。  片思いで終わらせるつもりはありません。  絶対に天魔はんを振り向かせます。」 「え・・・あ・・・・はぁ。」 「でも、天魔はん・・・もう、手を出されておられる。  それでもいい・・・最終的に天魔はんがうちを見てくれたら。  今日はそれを伝えにきたんどす。  それでは、明日からよろしゅうお願いします。」 そうして彼女・・・・いや、彼は去っていった。 その後はまぁ、塔野に尻を触られたり。 由良城に微笑まれたり。 式部に息子を揉まれたりもしたが襲われる事なく家に帰れた。 家に帰って即座に風呂に入り香水の匂いを落した。 風呂から出て体を拭きながら携帯を確認する。 「ん?  誰からだ?」 『天魔はん、いきなりのLINEすんません。  明日、うちは天魔はんのクラスに転入しますさけよろしゅうお願いします。』 何時の間に俺のLINEを知ったのだろう。 誰かが教えたのか? 俺はあまり深くは考えずにLINEを返信した。 『こちらこそ、よろしく!』 とだけ書いて送った。 そして、最後に熊の可愛らしいスタンプを送っておいた。

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