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第5話 無意識

朝5時に起きて用意をし始める。 完全に用意をして俺は無意識のうちに香水を手に取り首や手首にふりかけていた。 それに気付いたのは全てが終わった後だった。 「やってしまった・・・。」 仕方なく学校に向かう。 生徒は寮生活なので既に校門を潜っている者も居る様だ。 「天魔はん、おはようございます。」 「あ・・・えっと・・・どちら様で?」 俺の後ろに立っていたのは緑髪の髪の長い男だった。 彼の話し方は昨日会った長谷部にそっくりだが・・・。 「うちです。  長谷部 京極どす。」 「えっ!!!」 「見違えましたやろ?  天魔はんが望むのならうちは一生この姿でもええ。」 「い・・・いや・・・その・・・女性の姿でも男の姿でも美人だなと思って。」 「嬉しいどすなぁ。  天魔はんに褒めてもらえるや何て。  うちに惚れてもらえるのも時間の問題どすなぁ。  それと、うちの事は京極と呼んでください。」 「え?あぁ・・・分かった。」 京極はニッコリ嬉しそうに微笑み俺の手を握った。 すると、薬指に指輪をはめ込んだ。 「これが、うちの気持ちです。  これ、うちとペアルックなんどす。」 そういって自分の指を見せる。 京極の手には銀色に光る指輪がはめられていた。 「これで、うちと天魔はんとはこの指輪で結ばれて最後には身も心も結ばれるんどす。」 嬉しそうにてを見つめてうっとりする。 そんなに、俺と結ばれるのが嬉しいのだろうか。 俺みたいな平凡な男を好きになるなんて・・・・。 『きっと、アンタに幸せが訪れるだろう。』 お婆さんの言葉が頭の中に浮かぶ。 幸せか・・・。 「うちの親は天魔はんと結婚する事を認めてくれはっとるさかいに天魔はんさえ良ければ直  にでも手配できます。」 「み、認められてる!?」 「うちの親も同性婚やさかいに理解あるんどす。  うちは赤ん坊の頃に容姿にはいったんどす。  しりまへんか?  長谷部財閥・・・。」 長谷部財閥とは日本屈指の大手企業である。 長谷部財閥はだいだい同性婚を認めている家系らしく創設者も同性婚をしていたらしい。 「大手企業の息子さんだったなんて知らなかった・・・。」 「ひた隠しにしてましたから。  貴方と会う為に。」 うっとりした顔で俺を見る京極に俺は胸を打たれた。 どうしてそこまで俺に心酔しているのだろうか。 そこまで、ひたむきな思いをぶつけられると俺も嫌とは言えない・・・。 けれど、俺には頷く事はできなかった。 「おい、なにしてんだよ。」 「あ・・・塔野。」 「はじめまして、うち・・・長谷部 京極と言います。  貴方の事はよう知ってます。  うちの恋敵の塔野 篤郎はんでっしゃろ?」 「恋敵だぁ?  俺の天魔だ。  おめぇ何て恋敵でも何でもねぇ。」 「強制的にあんさんの者にしといて何が俺のモノです?  そんなん、ホンマの愛とちゃいます。  うちはちゃんと天魔はんの気持ちを考えて行動します。  脳筋のあんさんとはちゃいますんでほな、うちは校長室に挨拶いきますんで。」 京極は宣戦布告してその場を後にした。 塔野は完全に不機嫌そうな顔をして俺を見る。 やばい・・・。 「おめぇ・・・。  その、指のやつ外せ。」 「な・・・何でだよ・・・。」 「あ?  んなの決まってんだろ。  俺以外の奴からかってにモノ貰ってんじゃねぇよ。」 「俺はお前の恋人じゃない!  それに、俺が誰に何を貰おうと勝手だろ。」 俺は塔野を無視して歩き出した。 後ろから塔野の舌打ちが聞こえたが無視して歩き続けた。 式部が突然後ろから抱き着いてきた。 「天魔、今日も良い匂いがする。」 「ちょっ・・・はなっ・・・・。」 「なぁ、あの男誰?  塔野や由良城と一度だけなら多めに見てやろうと思ってたけど。  あの、京都弁の男とどういう関係?  どうして、指輪何て貰ってる訳?」 「え・・・何で知って・・・。」 「俺は天魔の全部を知ってる。  どこが感じて何が好きかも黒子の位置も手の大きさも足の大きさも爪の長さも全部。  でも、安心して・・・LINEとかは見てないから。  まぁ、必要とあらば見るけど。」 俺は背筋が凍る様な気持ちがした。 背筋に嫌な汗が流れる。 どうして・・・・。 「どうして・・・。」 「俺は一番に天魔の事を好きになったんだ。  婆さんから香水を買う前からね。」 「なんで・・・それを・・・・。」 「ずっと、見てたから。  でも、これからは正々堂々と天魔を見れる。  まぁ、敵は今3人も居るけど。」 俺の生徒にはどうしてこんなに問題児が多いんだ。 俺は今すぐ逃げ出したくなった。

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