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第2話
ついにアヤと会える日。
結局、あれからチョコは用意しなかった。忙しくて買いに行けなかったこともあるが、贈るならあのチョコでなければ意味がなかった。
アヤはたぶんチョコなんか準備してないだろうし、もらえるなんて期待もしてないだろう。なんならバレンタイン自体忘れているかもしれない。ただいつも通り一緒に過ごせれば、それでいい。
新幹線を降り、迎えに来ているアヤの車に乗り、アヤの部屋に着く。もうすっかり自分の家のように落ち着く。
ソファでだらんとしていると、アヤが隣に座ってきた。
「これ」
言葉少なに差し出してきたのは、シックな包装紙でラッピングされた小箱。
「何?くれんの?開けていい?」
予想外のサプライズに驚きながら尋ねると、アヤは無言で頷いた。
中身を早く見たくて、ビリビリと包装紙を破ってしまいたいぐらいに逸る気持ちをおさえて、丁寧にテープを剥がす。出てきたのは——
「あっ!」
リョウがあの女性に譲ったチョコレート。
贈るならこれじゃなきゃダメだと思っていたチョコレート。
「うそん……」
思いもよらぬサプライズに、リョウの目頭が熱くなる。事情を知らないアヤは、たかがチョコレートで泣くほど嬉しいものなのか、などと不思議に思っている。
「ありがと……めっちゃ嬉しい、実はな」
リョウはチョコを用意出来なかった顛末を話した。
聞き終えるとアヤは箱の中から、かわいらしい細工が施されたチョコレートを一粒つまんで、リョウの口に入れた。
「リョウのそういうとこ、好きだよ」
リョウはチョコを頬張りながら、蕩けるように微笑んだ。
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