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第参話 : 知らない顔

僕はあやめの登場にびっくりして体育座りから足を下ろしつま先を丸め強く力を入れた。 綾女は掴み所がない様な表情をしながら 座っている僕を見つめ口を開いた。 「別れ話にこの場所を選ぶなんて雪夜は酷いことするな〜」 どこか笑みを含んだ様に話す綾女に 僕は何も言わずに下を見続けた。 それでもなお、綾女は僕に向かって 話しかけ続けた。 「ねぇ、黙らないでよ〜雪夜はいつも困ると だんまりだな〜?俺、雪夜の声が聞きたいな〜?ねぇ、喋ってよ?雪夜?雪夜は誰のものだっけ?俺許さないよ?雪夜が他の奴の物に なるなんて考えただけでも虫唾が走る…… あれ?ねぇ雪夜?聞いてる?」 僕はだんだん綾女が怖くて綾女の顔を見ることが出来なくなっていた。 「あれ?雪夜?震えてんじゃん、やっぱここ 寒いから場所変えよっか?」 綾女はそう言って僕の手を無理やり引っ張り ベンチから立ち上がらせた。 僕は綾女の力の強さに怖くなり始めて声を出した。 「ねぇ、綾女‼︎僕行かない、嫌だよ…… 行きたくない!」 そう言って力を入れるも綾女の力には勝てず 引きずられていく 自分が今からどこに連れて行かれるのか 何をされるのか予測ができず怖くて 上手く力も入らなかった。 それでも綾女は僕を無理やり引きずって連れて行こうとする人目が多いイルミネーションの 綺麗な街に出ると僕はもう諦め綾女に 従うしかなかった。 でも、せめて何処に向かっているのかを知りたくて綾女に質問をした。 「綾女……何処にいくの?家は逆方向だよ?ねぇ、ねぇってば!綾女!?答えてよ……」 最後はもう、力もなく恐怖からか か細くなってしまい綾女にも聞こえている かさえわからなかった。 「よかったよ……」 綾女が僕の方を振り返り昔みたいな純粋な笑顔で僕を見つめた。 「なに?なにがそんなによかったの!? 僕は綾女がわかんないよ!?」 僕は綾女の言ってることがわからず大きな声を出してしまった。 それでも綾女は微笑みながら言葉を紡いだ。 「雪夜がまだ、この大通りの名前知らなくて」 僕は本当に綾女の言っている意味がわからなかった。でも、後でその意味を嫌という程味わう事になる。

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