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第陸話 : 不香の花
朝早く起きて隣でまだ眠っている綾女を見た。
綾女が僕を解放してくれたのは真っ暗な空が傾いて明るく色付いてきた頃だった。
綾女は瞼閉じて深く眠っている
長い睫毛が寒さで震えた。
起きてしまったかもしれないと思ったが
それは杞憂だったらしく再び深く息を吸い
規則正しい寝息を立て始めた。
僕はそっとベッドから離れようと試みる
それを許さないと僕の腰に絡みつく綾女の両腕それを眺めてそっと自分の腕を這わせた。
そして、最後の別れの言葉の代わりにと
綾女の両腕の温度に縋り付き虚しくなりながら
それでもその温もりを惜しく思った。
きっと僕はこれからも綾女を嫌いにはなれないそれでも、いつかはこの気持ちが思い出になるだからその日までさよなら。
心の中で別れを告げ
そっとベットから抜け出した。
扉を閉める寸前、名残惜しく見つめた部屋の
中から見えた光景は息を呑むほど綺麗だった。
洗い立ての太陽にキラキラと照らされて真っ白なシーツに身を包んで眠っている愛しい人が
とても綺麗で鼻の奥がツンと痛み目の奥が
じんわりと熱くなった。
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