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第5-2話知るほどに稀有な生態
やっぱり圭次郎のほうが偉い設定だったのか……しかも呼び名までしっかり変えてやがる。ケイロにアシュナムにソーア……全員元の名前をもじってるのか。てっきり既存のゲームかアニメかのキャラをコスプレしていると思ってたけど、まさかのオリジナル。
俺、そっちの世界はそんなに詳しくないけれど、百谷一家がコスプレイヤーの中でもコアな部類なのは理解できる。本当にスゲーな……お隣さんがこんなファンタジーだと、スマホでゲームする時間すらないな。あと勉強も。
――ということで、俺の中間テストはボロボロだった。
しかし夜は熱いコスプレごっこ、昼間は熱心に練習という俺以上に勉強していないハズの圭次郎は学年一位。
顔だけじゃなくて頭も良いのか……なんか解せない。
どうしてそんな点数が取れるんだよ、と登校中に圭次郎へ恨み節をぶつけてみたら、それはもう愉快でたまらないと言わんばかりな不敵な笑みを浮かべて俺に答えてくれた。
「俺は誰かに後れを取ってしまうことが耐えられんからな。ここへ来る前に、学び舎で使う書物の内容をすべて頭へ叩き込んできた」
……つまり転校してくる前に、全教科書丸暗記してきたってことか。
すごいな、と心から驚くと同時に俺の頭へ飛来したのは……何かと天才は紙一重なんだなあ、というモヤっとしたものだった。
あと、何気に引っ越してきて初めて圭次郎の笑顔を見てしまって、うっかりドキッとしてしまった。
学校どころか家ですら笑っている気配がないヤツなのに。
誰にも気を許さない孤高の獣が俺にだけ懐いてくれたような気がして、ちょっとだけ嬉しかった。
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