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第7-1話お前の世界に巻き込まないで
「お前……っ! ど、どうしてここに……?!」
「あ、いや、ちょっと寝過ごして遅刻したら、戦闘ごっこしてたから、つい見入って……」
「はぁ? 戦闘ごっこ、だと……チッ……見えないっていうのは厄介だな」
苛立たしげに舌打ちをしたと思ったら、圭次郎は俺の手を掴んで走り出した。
「な、なんだよ、急に……っ!」
「良いから来い! 全力で走れ!」
圭次郎の勢いに呑まれて、俺は言われるままに走る。
黒尽くめの男が追おうとした瞬間、圭次郎はソイツに手の平を向けて口早に呟く。
「火と水の精霊よ、互いに交わりて我に身を捧げよ……もっとだ……よし、続けろ」
呪文っぽいものを圭次郎が言い出した途端、男の足が止まり、呻きながらその場でバタバタと腕を振り出す。まるで煙にやられて悶絶しているような……迫真の演技だ。見えない煙が見えてくる気がする。
思わず俺は感嘆の息をついた。
「スゲー演技力……演劇の養成所とか通ってそう」
「呑気なことを言うな! いくらこちら側の住人でも、直撃を食らえば無事では済まないからな?!」
未だに緊張感が途絶えていない圭次郎が、俺の呟きを聞いて睨みつけてくる。いつも誰に対しても興味なしで冷たい顔しているクセに、こんなに必死の形相を向けられて新鮮だ。コイツには悪いけれどワクワクしてしまう。
でも俺、劇とか苦手なんだよなあ。国語の朗読とか棒読みしかできないし……悪い、圭次郎。俺はお前の世界には入れないから。だから俺を巻き込もうとしないでくれ。
俺は走るのをやめて、圭次郎を引き止めた。
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