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第7-2話お前の世界に巻き込まないで

「お前の邪魔して悪かった。俺、あっちの西階段使って教室行くから……今日のこと、誰にも言わないから、俺に構わず練習続けてくれよ。あ、もう少しで授業終わる頃だから、そろそろ切り上げたほうがいい――」 「待て……練習って、どういう意味だ?」 「分かってるから、俺。百谷が王子様のコスプレにスゲー力入れてるの。密かに応援してるからっ。変人なんて言われたくないから、こうやって人がいない時に寸劇の練習しているんだろ? みんなには黙ってるから安心してくれ」  次第に圭次郎の顔が強張り、肩が震え出す。明らかに滲み出てきた怒りを俺にぶつけてくる。 「……いち早く俺たちの正体に気づいて、監視していたのかと思ったが……そんなふざげた内容だったとは。一目置いていた俺が馬鹿だった……」 「か、監視?! いや、そんなことしてない――」 「お前が俺を常に見ていたことは、とっくの前から気づいていたんだ。敵側の人間か、それとも異世界から来た俺たちを警戒する勘の鋭い人間かと様子を見ていたら……こんなくだらない中身だとは……っ」  い、異世界? 敵側? 圭次郎の中で俺、どういう役柄設定になってたんだ? しかも一目置いてたって、まったくそんな風に見えなかったんだけど。  早く圭次郎が想定する仮想異世界ワールドから離脱したくて、俺は必死に言葉を重ねた。 「確かにくだらないことしてたけど、邪魔はしたくないんだ。本当に。とにかく、俺はお前のハマりっぷりを鑑賞していただけ! それは謝るから、俺を巻き込まないでくれ。そんな風に役作って成り切れるような人間じゃないから!」 「……風の精霊、コイツの本音をぶちまけてくれ」 「このまま誰かに見られて、俺まで変人扱いされたくない――っ! ……ハッ、口が勝手に……?!」  うっかり言うまいとしていた本音が口から出てしまい、俺の全身から血の気が引く。  怒りでしかめっ面になっていた圭次郎の顔へ、急に不穏な笑みが浮かんだ。 「坂宮太智……お前の本音、しかと聞いたぞ。ここまで俺を不愉快にさせる存在がいるとはな……許せん」

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