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第8-2話やってくれたな、巻き込み婚
「クックック……この世界の人間では、俺たちの世界から持ってきたものは見えないからな。同じ世界の者になってもらったぞ……俺が頭のイカれた変人ではないこと、思い知ったか」
「……百谷。同じ世界の者になってもらったって、どういうことだ?」
「婚姻を結ばせてもらった」
「は? こ、こん、いん……?」
「喜べ。このウォルディア王国第二王子ケイロの花嫁となったことを……」
……花嫁……俺が……?
ま、待て待て待て! 俺の同意なしで結婚しちゃったのかよ?!
現実離れした状況に固まっていた俺の頭がゆっくりと動き出す。
口元やら頬やらを引きつらせながら俺は圭次郎に顔を戻す。言いたいことが山ほどあり過ぎて、どれからぶつけるかを選べず、唇が戦慄いて言葉がすぐに出てこなかった。
「どうした? 嬉しさのあまり言葉を失ったか」
「ち、違……っ! 結婚ってお前……っ、俺に、これを見せたいがために結婚したのかよ?!」
「ああ、そうだ。変人として見られるなど、堪え難き不名誉……だが変人の汚名を晴らすために、大人しく振る舞う訳にもいかんからな。坂宮太智、お前もこれから好奇の視線に晒されて、変人の烙印を押されるがいい」
「そんなことで結婚するなよぉぉっ!」
「ちなみに離縁は不可だ。どちらかが死ぬまで解消されることはない」
「お前、実はアホだろ……?! 本物の王子様のクセに、取り返しのつかないことするなよぉ……」
怒りを通り越し、俺はあり得ない現実に打ちひしがれる。
ホント……どうすんだよ。俺ら男同士なんだぞ? しかもそんなに仲良くない上に――家も席も隣だから、他のヤツらに比べたら良いほうかもしれないけれど――お互いのことさっぱり知らないんだぞ? マジで住む世界が違うんだぞ?
巻き込み目的で迂闊に結婚なんかするなよぉ……!
涙目になってきた俺に構わず、圭次郎は手首から伸びる火の鎖を掴み、捕らえた男を引っ張る。
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