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第11-2話事情は分かったから離縁して

 お、おい、なんだよその本格的な内容は。あんな簡単でふざけた理由の強制結婚なのに……マジ過ぎて引く。  このまま呆然としていたら、あっという間にその時が来てしまいそうな気がして、俺は考えがまとまる前に口を開いていた。 「俺、嫌だからな! ケイロたちの事情はよく分かったから、もう離婚してくれ。頼む。ってかお前だって俺が相手なんて嫌だろ? 本気で一生添い遂げる気なんてないだろ? ほら、あんなに簡単に結婚できちまったんだから、実は離婚だって同じように――」 「昼間も言ったが、この婚姻はどちらかが死ぬまで解消されない。お前との婚姻は不本意ではあるが、当然俺は死ぬ気はない。となればお前を殺すことになってしまうが、それが望みか?」 「そんな訳ねぇだろ……っ!」 「ならば俺を殺すか?」 「くっ……そんな理由で殺せるかよ」 「奇遇だな、俺も同意見だ。となれば、この婚姻を受け入れて、面倒で大仰な約束事をさっさと進めてしまって、新婚生活を楽しんだほうが有意義だろ」  殺せないから受け入れるって……なんだよその究極の選択は。あと割り切り過ぎ。ケイロ、お前には好きでもない男を娶るっていう葛藤とかないのかよ?!  異世界の人間だからか、ケイロだからなのか、価値観が違い過ぎて理解し合える気がまったくしない。  どうにかして離婚できないのかと必死に頭を動かしている俺へ、ケイロが追い打ちをかけてきた。 「さあ、今日は初夜だ……俺に身を委ねてもらおうか」  立ち上がったケイロが躊躇ない足取りで俺に近づき、肩を掴んで押し倒してくる。  嫌味なほどきれいな顔が俺を見下ろし、今からどう苛めてやろうかと企んでいるような悪戯めいた笑みを唇に浮かべていた。

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