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第17-2話手放す気がない奴

 百谷家の中でも一番強面の部類に入るアシュナムさんから笑みが消えると、漂ってくる気迫がすごい。この件では俺にとって心強い味方だが、それでも俺の心がすくみそうになる。  ケイロもアシュナムさんも譲る気なしで、室内の空気をどこまでも刺々しくしていく。息苦しくて俺が居心地の悪い思いをしていると、 「お二人とも、少し落ち着きましょう。コーヒーを淹れましたので……どうぞ」  ソーアさんがにこやかな顔でリビングへやって来て、俺たちの前にコーヒーを置いてくれる。  殺伐なオーラを放っている二人と違い、ソーアさんは穏やかなまま。癒しキャラだなこの人……と思っていると、俺の側に来て膝をつき、顔を合わせてきた。 「こちらの都合に巻き込んでしまい、大変申し訳ありません……殿下は我々が必ず説得しますから、どうか今しばらく猶予を頂けませんか?」  眼鏡の下で優しく微笑む目が、今の俺には眩しくて仕方ない。密かに心の中で手を合わせて拝んでしまう。 「あ……はい、どうにかしてくれるなら、俺はそれで――」 「……その時が来ても、俺が忘れられなくて同意できない体にしてやる」  ケイロから物騒な呟きが聞こえてきて、俺は思わずソーアさんへ必死に訴えた。 「な、なるべく早くお願いします! 俺、ただの一般人なんで、そんなに持たないかもしれないんで!」 「善処します! 全力を尽くして対処しますから!」  間違いなくケイロはその気でいる。本気でヤる気だ。ソーアさんも察したようで、互いに顔色を変えて言い合うハメになった。

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