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第23-2話気持ち良すぎるのがダメなんだ

 ホームルームの前に行われる清掃の時間、俺はぼんやりしながら持ち場である美術室の床を箒で掃いていた。  毎日やってるし、床はキレイなもんだ。軽く掃除してゴミを取ってしまえばそれでおしまい。他のヤツらは部屋に入って三分くらいで掃除を切り上げ、仲の良いクラスメートと談笑している。  俺も普段なら同じような行動を取っているが、今は昼間のショックを引きずっていて、談笑する気になれなかった。かといって何もしないとまた頭が勝手にグルグルと考え出してしまいそうで、俺は箒で気を紛らわせていた。  いっそ俺の頭の中もモヤモヤも、箒でさっさかさーと掃いてスッキリしたい……。  現実逃避しかかっていたその時だった。 「……ん……?」  ふと窓の外――中庭のほうからざわついた声が聞こえてくる。そして、 『急にどうしたんだよ、百谷?!』  耳に飛び込んできた男子生徒の声に、俺の顔から血の気が引いていく。  嫌な予感しかない……。  咄嗟に駆け出して、俺は急いで窓から身を乗り出して中庭を覗き込む。  そこにいたのは白銀の剣を握って剣を振るうケイロと、それを取り囲む黒い狼のようなヤツが数匹。  ――だが、みんなにはケイロが何もない所を睨み、腕を振ったり、体を捻ったりしているようにしか見えないようで、一様に不思議がっていた。

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