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第26-2話校舎裏の見事な土下座

 白い腹に痛々しい痕を目の当たりにして、俺は顔をしかめてしまう。  俺たちの世界のものとケイロたちの世界のものがぶつかると、同じ世界のもの同士がぶつかるより威力が弱くなると説明を受けた。  話を聞いた時は、じゃあ巻き込まれなかったら安全だったんじゃないかと、強制的に異世界側の人間にさせられたことに憤ったけれど……思ったよりも安全じゃないのだと今さら理解した。  もし一撃即死の攻撃を受けても、死にはしないだけでやっぱりダメージはある。  ダメージが少ないからといって、見えないままなら攻撃されても避けようがないし、ワケが分からなくて恐怖するしかない。これはこれで厄介だ。  もしかして、見えていたほうが攻撃を避けられて安全だと思ったから、ケイロは俺に見えるようにしてくれたのか? ――いや、そこまで考えていないか?  疑問が頭を過ったが、まずは手当てが先決だ。  アシュナムさんが「早く保健室へ!」と土下座したまま訴えるが、ケイロは「これぐらい問題ない」と言うことを聞かない。思わず横から俺はアシュナムさんの援護射撃をしていた。 「こらケイロ、傷を甘く見るなよ。後でひどくなるかもしれないぞ、コレ……ちゃんと手当てしろ」 「……太智がしてくれるなら行く」  俺の言うことなら聞いてくれるのかよ。可愛いところあるな……って、やっぱり絆されてきている。こんな俺よりデカくて顔の良いヤツを可愛いなんて……生意気でワガママで憎らしいんだって、コイツは!  骨の芯までおかしくなってしまいそうな自分を叱咤しながら、俺は「じゃあ行くぞ」とケイロを促して保健室へと向かった。

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