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第28-1話●苛立ち紛れで結婚したんじゃないのかよ?
「あ……っ……く、ぅぅ……やめろ、ってぇ……汚い、から……」
「きれいにすれば問題ないんだな?」
そう言うなりケイロは俺の胸中央に手を当て、小さく呟く。
ザァ……ッと全身の肌を、生ぬるいお湯でも流れていくような感触が広がる。指先までそれが届き切ると、妙にさっぱりとした爽快感がやってきた。
「ン……お前なぁ……魔力、切れかかってたんじゃねぇのかよ……」
「これは消費が少ないから問題ない。子供でも使える初歩の魔法……覚えてみるか?」
一瞬、便利でいいかも……と思ったが、すぐに考えを変えて俺は首を横に振る。
「……やめ、とく。いいようにコキ使われそうだし」
半分だけの本音。もう半分は、今よりもケイロたちの世界に深く関わるようになって、本当にこっちの世界へいられなくなりそうな気がして怖いという弱音。
そんな俺の不安などお見通しなのか、ケイロはどこか宥めるように俺の頬や額に柔らかく口付けながら囁いてくる。
「気が変わったらいつでも言え……どうせ俺の世界へ行けば、堅物の魔法教師に教わることになる。俺から教わったほうが楽だと今の内に言っておくぞ」
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