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第29-1話●考えないようにしていたこと
体どころか心すら抵抗させまいとするように、ケイロが俺の唇を貪る。
クチュクチュと舌が絡まり合う音と感触が、頭の奥まで響いて熱に浮かされていく。
ああ、今ごろホームルームだろうな……俺がこんな目に合ってるなんて、誰も思わないだろうなあ。
同じ校舎内のことなのに、当たり前だったハズの日常が遠い。
人生を丸ごとケイロに巻き込まれた感がひどくて悔しさすら滲む。それなのに、
「ん……むぅ……、ぅ……っ……ンン……」
キスと愛撫に溺れていく俺の体は、もう甘ったるくて快感に従順で情けない声しか出さない。掴まれていた手首が解かれ、そのままずり上がって指を絡められた瞬間、胸の奥がやけに引き絞られて息が詰まった。
このまま最後まで――と完全に心が行為のすべてを望んでしまったのに、ケイロは俺の下半身を全部暴いてから体を離した。
「ぁ……え……?」
「お前に褒美をやると言っただろ? 今すぐやめろと言うならやめてやるし……俺との婚姻も破棄したいと言うなら、聞いてやってもいい」
ケイロ……お前、今それを言うか……?!
心から望んでいたハズの選択をチラつかされて、俺は思わず息を引く。
……でも、それ言ったら楽にしてくれないんだろ、体?
体も頭もお前に弄ばれて、今すぐ欲しくてしかたないんだけど……っ。
唇をパクつかせて言葉を出そうとするが、声は出ない。
何度か息を詰まらせ、吐息を漏らして……それからようやく震える声でケイロに告げた。
「いつもの、やって……お前ので、ぐちゃぐちゃに……」
「……こういうことか?」
俺のヒクついて誘う尻へケイロが指を這わせると、掠れた小声で呟き、俺の中へ粘ついた液体を注いでくる。そしてわざとらしく火照った穴へ指の腹を押し付け、円を描くように揉んできた。
「はっ、ぁ……あっ、ち、ちが……ア……っ」
ぐに、ぐに、と指で刺激される度に中の液まで波打ち、奥のほうまで刺激してくる。
体の芯が痺れて声の甘ったるさが余計に悪化する。でも、いつもケイロを迎えた時の圧迫感がまったくなくて、気持ち良いのにせつなくてもどかしい。
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